歯とその周囲の歯槽骨(しそうこつ)との間には、繊維に富んだ歯根膜(しこんまく)という組織があります。動かしたい歯に矯正装置で適度な力を加え、この歯根膜を圧迫すると、そこに骨を吸収する細胞が現れます。反対側の引っ張られる歯根膜には、骨を作るもとになる細胞ができます。そうして歯はゆっくりと動きだすのです。これは歯が、骨の中を通って自然に生えてくるときに起こっている変化と同じメカニズムです。 矯正治療は、矯正技術で加える力の大きさや方向を十分に考慮し、歯を無理なく自然の場所へ動かすのです。
矯正歯科治療の限界
このように歯は歯槽骨の中で移動することができます。
このことは一方で、矯正歯科治療で歯を動かしていく際の限界を表しているのです。
① 骨格的な不正に対する歯の移動の限界
② 歯の移動による顔貌変化の限界
③ オーバージェット(上下顎の前歯の距離の値が大きいもの)
④ 上下顎の正中線の一致
⑤ 過去の抜歯や先天欠如による歯の隙間(空隙閉鎖)
歯槽骨をはみ出してた歯は長持ちしません。したがって不正咬合の原因が骨格的な不調和によるものであれば、歯の移動のみで理想的な咬合関係を獲得することが困難な場合があります。