本会の矯正歯科治療に関する考え方:矯正歯科治療のお話|質の高い矯正治療と安心の提供に努める矯正歯科専門の開業医団体「日本臨床矯正歯科医会」

本会の矯正歯科治療に関する考え方

本会の矯正歯科治療に関する考え方:目次

>>公益社団法人日本臨床矯正歯科医会のオルソドンティストがめざす「矯正歯科治療」とは

>>「上顎前歯が突出した小児に対する早期治療(※)」に対する本会の見解

>>拡大床使用に関しての本会の見解

>>カスタムメイドのアライナー型矯正装置(マウスピース型矯正装置)に対する本会の見解

>>セカンドオピニオンとは?

 

 

 

 

公益社団法人日本臨床矯正歯科医会のオルソドンティストがめざす「矯正歯科治療」とは

心身の健康を達成するために私たちが目指す”矯正歯科治療”とは-

矯正歯科治療は、歯の位置やあごの骨を長い時間かけて少しずつ変化させ、悪い歯並びを治し、よい咬み合わせを実現させていきます。それは顎や顔を構成する骨格が調和のとれている状態で、口腔機能の改善と向上を伴うことを前提としています。その結果として、審美的な歯並びや口元、顔貌になることが良質な矯正歯科治療に求められるものです。
すなわち

よい咬み合わせきれいな歯並び
感じのよい口もと口の健康の増進
治療後の安定性

をトータライズして獲得することであり、見た目のきれいさだけではなく機能が伴い、さらには生涯にわたってきれいな歯並びと健康を維持できることを目指しています。矯正歯科治療が美容を目的にしていると思われることは、会員の本意ではありません。

日本臨床矯正歯科医会「新・東京宣言」

国民の心身の健康とその生涯維持には、健康は口腔を獲得する必要があり、そのために適切な矯正歯科治療は重要な役割を果たします。その認識に立って本会会員は、臨床的および倫理的判断に則り、患者さんの立場に立った矯正歯科医療を実践します。また保健・教育活動にも積極的に参加し、矯正歯科治療の社会的認知と共通理解が得られるように努め、国民と医療を共有していくことを宣言します。

1 私達は、矯正歯科専門開業医として自己研鑽に努め、その専門的知識・技術をもって良質な矯正歯科医療と安心できる医療態勢を提供することで、国民の健康増進、生活の質の向上に貢献します。
2 私達は、広報活動を通して、矯正歯科医療の正しい情報を社会に広く伝えます。
3 私達は、国内外の矯正歯科医や矯正歯科に関係するすべての職業人と連携し、矯正歯科医療の発展を通して社会に貢献します。
4 私達は、医療人としての倫理観に基づき,法令遵守に努め、患者さんの同意を尊重して、国民から信頼される矯正歯科医を目指します。

※平成25年2月6日東京で開催された日本臨床矯正歯科医会創立40周年記念大会にて「新・東京宣言」を採択しました。

安心して治療を受けていただくための6つの指針(矯正歯科診療所が備えるべき6つのポイント)

適切な矯正歯科治療を受けていただくために、2015年、本会では患者自身が信頼できる矯正歯科を見極めるための”受診時の目安”として、6つの指針を提言として掲げました。

重要:(1)頭部X線規格写真(セファログラム)検査をしている
セファログラムは診断のグローバル・スタンダードで、特に子どもの患者さんでは顎顔面の成長バランスや成長方向、量の予測をするために不可欠な検査です。

重要:(2)精密検査を実施し、それを分析・診断した上で治療をしている
矯正歯科治療を行うためには、臨床検査として①口腔内検査 ②顎機能と咬合機能の検査 ③顎のプロポーション検査 ④筋機能の検査、また、診断資料の分析として①模型分析 ②頭部X線規格写真の分析 などを実施した上で診断を行うことが不可欠です。

重要:(3)治療計画、治療費用について詳細に説明をしている
矯正歯科では、検査結果を詳細に分析した上で診断を行い,治療計画を立案します。
治療計画については、わかりやすい治療のゴールやそのプロセスを患者さんに示しながら、それぞれの患者さんに適した治療装置とその効果,治療期間、第二期治療の可能性(子どもの場合)、保定、後戻りの可能性や治療のメリット・デメリットおよび抜歯・非抜歯について説明を行います。
治療費用についても、治療費、調節料、支払い方法(一括・分割)、装置が壊れたときの対応、転医あるいは中止する場合の精算についても詳細説明を行い、患者さんの同意を得てから治療を行います。

重要:(4)長い期間を要する治療中の転医、その際の治療費精算まで説明をしている
本会には治療中に転居等で診療所を変わらざるを得なくなった患者さんに、転居先にできるだけ近い矯正歯科を紹介する「転医システム」があります。
【紹介先】当会所属の矯正歯科専門開業医
     治療費の過不足も当会の取り決め目安に沿って精算

推奨:(5)常勤の矯正歯科医がいる
常勤の矯正歯科医がいることは、以下のようなメリットにつながります。
・治療において画像診断ができる撮影機器などの環境・設備が整っている
・矯正装置が取れてしまったなど器具に不具合があっても、すぐに対応できる
・同じ担当医による一貫治療が行える

推奨:(6)専門知識がある衛生士、スタッフがいる
矯正歯科への豊富な経験と知識があるスタッフがいることは、以下のようなメリットにつながります。
・矯正歯科医の指導監督のもとに、患者さんへのさまざまな対応が可能となる
・矯正装置への口腔衛生指導が行える
・治療中の食事指導が行える

本会は、より多くの皆様に矯正歯科治療についての正しい知識を身につけていただくとともに、歯科全体における矯正歯科医療の向上と自己研鑽に努め、質の高い治療と安心を提供していきます。

「上顎前歯が突出した小児に対する早期治療(※)」に対する本会の見解

先般「上の前歯が出ている子どもは、永久歯が生えそろうまでは、矯正歯科治療を行わないことを強く推奨します」としたガイドラインが発表されました。すでに矯正歯科治療中、あるいはこれから治療を予定されているお子様のご家族の中には混乱や不安を感じる方々もおられるようです。しかしながら、実際に日本のみならず海外でも、上顎前歯が突出した小児に対する早期矯正治療は行われており、良好な結果を得ています。そのためには矯正歯科医が充分に精査診断し、早期治療の必要性と効果を適切に診断した上で長期的な治療計画のもとに治療を行うことが重要です。
前述のガイドラインは過去に発表された上顎前突の治療に関する科学論文の医学的データを基に作成されましたが、矯正歯科の分野はデータを得るための条件の統一等が難しく、現時点では十分な根拠(ランダム化比較試験に基づくエビデンス)がないことも明らかになっています。特に日本人の研究結果を掲載した科学論文は不足しており、この状況から得られたガイドラインは、わが国の矯正歯科治療の実態にはそぐわないと考えざるを得ません。
矯正歯科治療の開始時期は矯正歯科医が患者さん一人一人の症状や心理的側面、生活背景なども見極めて個別に判断する必要があります。そのため「この症状に対してはこの時期に治療を開始しなければならない」といったことはありません。多様な病態を持つ上顎前突をひとくくりに考えずに、矯正歯科医による十分な精査・診断により、その必要性、治療開始時期が選定されるべきです。従って専門教育研修を受け、豊かな経験を有する矯正歯科医が、適切な検査の後に早期治療の必要性があると診断し、十分な説明と患者と保護者の同意を得た上で行うのであれば、上顎前歯が突出した小児に対する早期矯正治療を行うことに問題はないと考えています。
一方、巷で行われている「早期治療」と称されるものには残念ながら十分な検査や矯正歯科医による診断、長期的な治療計画に基づかないものも見受けられます。現在受けられている治療の必要性と治療開始時期等に関して不安を感じている皆様には、本会会員をはじめとする矯正歯科専門開業医あるいは大学病院矯正歯科でのご相談をお勧めいたします。
※早期治療:乳歯の時期や乳歯と永久歯が混じり合う時期に、あごの成長を見ながら咬み合わせやあごの成長のコントロールなどを行う矯正歯科治療。

拡大床使用に関しての本会の見解

拡大床を使用している患者さんの中には過剰な拡大をされていたり、長期間使用した結果、他の不正咬合が発生している方も少なくありません。また、一時的には拡大したものの後戻りが生じている方や全く症状の改善の見られない方も多数いらっしゃいます。
拡大床による歯の移動様式は顎を拡大するわけではなく歯を傾斜させるため、拡大床の適応症例は限られます。また拡大床に限らず、拡大を行った後にはマルチブラケット(ブレース)を用いて歯を緊密に咬合させることとその後の保定(後戻りの管理)を行うことが大切です。
矯正歯科治療は十分な精査・診断により、最終的な治療のゴールを見すえて、使用する装置を選択し、歯を抜くか否か、さらには治療開始時期などを選定すべきもので、すべての症状に対して単一の装置を用いることはありません。
お子さんの矯正歯科治療については、本会会員をはじめとする経験豊かな矯正歯科を専門とする歯科医師によく相談いただくことをお勧めいたします。

カスタムメイドのアライナー型矯正装置(マウスピース型矯正装置)に対する本会の見解

1.カスタムメイドのアライナー型矯正(歯科)装置とは

マウスピース矯正やアライナー矯正ともいわれ(以下 マウスピース型矯正装置と表記します)、患者の石膏模型やデジタルデータを技工所に送り、そこで作製された厚さ0.5mm程度の透明なマウスピースを一日約20時間以上口腔内に装着し、歯の移動に伴い数種類のマウスピースを順次使用して歯並びを整える装置です。

厚生労働省の見解では、アライナー型矯正装置は国内外で製作されたものを問わず日本国の薬機法(旧薬事法)上の医療機器には該当せず、医薬品副作用被害救済制度の対象外とのことです。診療にあたっては、「歯科医師が患者への十分な情報提供を行ったうえで患者の理解と同意を得ることを遵守し、歯科医師の全面的な責任の下で使用されたい。」との指示が出されています。(日本矯正歯科学会HPより一部改変)

YouTube「知ってほしい!アライナーの真実」

2.マウスピース型矯正装置のメリット・デメリット

-マルチブラケット装置との比較―
マウスピース型矯正装置のメリットとデメリットを、現在の矯正歯科治療の装置として最も普及し、また、治療効果が優れている「マルチブラケット装置」と比較してみます。

【メリット】
・見た目が目立たない。
・金属アレルギーなどの理由でマルチブラケット装置が使えない患者にも使用可能である。
・必要に応じて患者自身で取り外すことができ口腔清掃が容易である。

【デメリット】
・治療が患者の自己管理に委ねられているため予期しない結果が生じることがある。
・歯の移動の限界があるため治せない症状がある。

3.本会としての危惧

マウスピース型矯正装置は患者の使用状況に治療結果が大きくが委ねられ、また、歯の移動範囲も限られていることから、予想外の治療経過をたどることや、目標とした治療結果が得られないことがあります。そのようなときには代替の治療法としてマルチブラケット装置による修正が必要となるため、マルチブラケット装置による治療技術を習得した歯科医師によって治療がなされなければなりません。

近年、矯正歯科医を介さずに本装置を使用するビジネスモデルが提案され、矯正歯科治療の技術を習得していない歯科医師による治療例が急激に増えています。

矯正歯科治療はその結果がでるまでに年単位の期間がかかるため、不適切な治療によるトラブルが顕在化するまでしばらく時間はかかるかもしれませんが、既にそのような兆候は本会の患者相談窓口「矯正歯科なんでも相談」にも表れていて、今後数年の間に激増することが危惧されます。

4.マウスピース型矯正装置に対する本会の見解

(1)マウスピース型矯正装置には推奨されない不正咬合があります。
マウスピース型矯正装置は1990年代に開発され、その安全性と有効性は科学的に高いレベルで明らかにされてはいません。また、歯の移動にも限界があるため適応症を見極めることのできる矯正歯科医による治療が必要です。

(2)治療のゴールはマルチブラケット装置と同等でなければならない。
矯正歯科治療は健康になるための医療です。そのためマウスピース型矯正装置でも従来のマルチブラケット装置でも治療のゴールが変わるべきではありません。したがって治療を行う歯科医師にはマルチブラケット装置による治療のゴールを設定できる技能が求められます。

(3)マウスピース型矯正装置を使用する歯科医師は、マルチブラケット装置による治療技術を習得していることが不可欠である。
本装置による治療を始めた後、何らかの理由で使えないとき、また予定した効果が出ないときには別の装置でリカバーしなければなりません。そのためには、マルチブラケット装置によって適切に治す必要があります。たとえ患者と歯科医師の間で本装置による治療結果は保証されるものではないとの同意を得ていても、代替装置で良い結果が得られる場合はその治療を提案し行うことは医師として当然の責務です。

(4)矯正歯科治療が適切に行われる治療環境が不可欠である。
すべての矯正歯科治療に言えることが、マウスピース型矯正装置を使用する際にも当てはまります。すなわち歯科医師個人の技量だけではなくその技量を発揮できる環境で治療が行われなければなりません。本会はそれに関する6つの指針を提言しています。

5.チェックリスト

−マウスピース型矯正装置を用いた矯正歯科治療を安心して受けていただくために知っておきたいこと−

☐マウスピース型矯正装置による治療の結果は、装着時間(推奨される装着時間は1日20時間以上)に大きく左右されることをご存知ですか?☐マウスピース型矯正装置の治療で十分な結果が得られなかった場合、治療目標を達成するためにマルチブラケット法による追加の治療が必要となることをご存知ですか?

本会の提唱する、安心して治療を受けていただくための6つの指針(矯正歯科診療所が備えるべき6つのポイント)をご存知ですか?
マウスピース型矯正装置は国内外で作製されたものを問わず日本国の薬機法上の医療機器には該当しないため医薬品副作用被害救済制度の対象外となることをご存知ですか?
マウスピース型矯正装置を用いて治療する歯科医師には、診断、治療計画、設計等について矯正歯科学的な専門的知識が必要であることをご存知ですか?
マウスピース型矯正装置の適用には推奨されない症例があることをご存知ですか?

 

セカンドオピニオンとは?

セカンドオピニオンとは?

「セカンドオピニオン」とは、治療開始前、治療中に、しっかりとした検査診断に基づいて担当医から提示された診断や治療方針に対し、他の判断や選択肢がないのかどうか、違う医療機関の歯科医師に「第2の」意見を聞くことです。

矯正歯科治療についての相談を、治療開始前に検査・診断をうけずに、複数の歯科医師に相談すること、過去の治療の内容や結果についての相談などは本来のセカンドオピニオンではありません。通常の矯正歯科相談になります。

矯正歯科治療の技術や装置が進歩してさまざまな治療法が生まれています。また、矯正歯科治療は非常に専門性の高い治療であります。矯正歯科治療の治療方針・治療内容はバリエーションが多く、診療ガイドラインが確立されていない部分があります。また、治療の最終ゴールの設定(症例の仕上がり)が歯科医師により差があることもあります。その結果、歯科医師や診療所によってあなたの治療に対する考え方や技術もしくは診療サービスの質に差があることも考えられます。

また、矯正歯科治療は始まってから治療方針等を変更するのは簡単な作業ではありません。矯正歯科治療は患者さんと歯科医師の二人三脚で進めていくべきものです。治療開始後は歯科医師を信頼し、話し合いをしながら治療を進めていきましょう。

 

本会診療所でセカンドオピニオンを受けたい方

A. 治療段階による違い

1.矯正歯科治療の検査・診断前の段階

検査・診断を受ける前であれば、矯正歯科治療の相談をした歯科医師に、複数の 歯科医師に相談することを伝える必要はありません。複数の歯科医師に相談し、意見 を聞き最善の方法および矯正歯科医をお選びください。
(これはセカンドオピニオンで はありません)

2.検査診断を受けて治療開始前および治療中の段階:セカンドオピニオンの流れ

1)検査・診断を受けた歯科医師(前医)にセカンドオピニオンを受けたい旨伝える
2)前医から紹介状および資料(初診時および治療経過:模型、口腔内写真、顔面写真、セファロ、パノラマなど)を受けとる(資料作成費用:10,000円から30,000円ほど)
3)セカンドオピニオンを受けたい歯科医師(後医)に連絡をとり、資料を持参する(セカンドオピニオン費用:10,000円から30,000円ほど)
4)資料をもとに、後医から治療に対する考え(意見)を伺い、文書を受け取り前医に報告する
5)必ず元の医療機関へお戻りいただきます
6)前医とご相談の結果、他院での診療をご希望の場合は改めて、前医からの紹介状をいただき、転医の手続きが必要となります。
7)転医を行う場合(病院を変える場合)は今後の治療費の問題がございますので、費用についてもご相談ください。

*患者さんご本人への相談を原則としますが、やむを得ぬ事情により患者さんご本人が来院出来ない場合は、ご家族も対象とします。その際は、ご本人の委任状が必要です。

3.矯正歯科治療後の段階

矯正歯科治療終了後で過去に行われた治療について、別の歯科医師に相談することは、本来のセカンドオピニオンではありません。

 

B.セカンドオピニオンの料金

・健康保険は適応されません(自費診療の扱いになります)
・相談は時間を決めて行い、その料金には歯科医師への報告文書作成時間も含まれます
・セカンドオピニオンのための資料を作成する場合も、セカンドオピニオンを受け、報告書を作成する場合もそれぞれに通常10,000円から30,000円ほどかかります。
(詳細は、直接担当医に確認ください)

 

C.セカンドオピニオンを受ける診療所

公益社団法人日本臨床矯正歯科医会 会員診療所
https://www.jpao.jp/search

を推奨いたします。
ただし、セカンドオピニオンを受け付けていない診療所もありますので、ご確認ください。

 

D.セカンドオピニオンをお受けできない場合

1)患者さん本人以外からの相談の場合
2)患者さんご本人以外の方で、患者さん本人からの委任状をご持参頂けない場合
3)最初から転院を希望されている場合
4)患者さん本人が、死亡されている場合
5)主治医に対する不満、医療事故・医療過誤及び訴訟に発展する可能性が危惧される相談の場合

 

本会診療所で診断・治療を受け、他診療所でセカンドオピニオンを受けたい方

本会診療所で検査・診断・治療を受け、他診療所でセカンドオピニオンを希望される場合は、紹介状および資料(初診時及び資料経過:模型、口腔内写真、顔面写真、セファロ、パノラマなど)をお渡しします。

セカンドオピニオンをお受けになった診療所から必ず、報告書を頂いてきて下さい。