vol.29 北海道から、初の“ハイブリッド開催”!「第17回ブレーススマイルコンテスト」表彰式レポート
2005年より回を重ね、第17回目を迎えた「ブレーススマイルコンテスト」(通称「ブレスマ」)。それは矯正装置(ブレース)をつけて治療をしている患者さんの笑顔を募集するフォトコンテストです。今回のトレンドウォッチは、2022年2月16日(水)、北海道にて開催された「第17回ブレスマ」の表彰式の様子を、受賞者へのインタビューなどを交えながらご紹介します。(記事作成 2022年3月6日)取材・文:冨部志保子(編集・ライター)
全国から寄せられた338点の
とびきりのブレーススマイルたち
1年のブランクを経て復活した「ブレスマ」
「面倒」「時間がかかる」といったネガティブなイメージから、すこやかな美しさを獲得するための賢い選択というポジティブなイメージへ――。矯正歯科治療に対する捉え方が大きく変わってきた近年、子どもから大人まで幅広い年齢の人が、何でもよく噛める安定した歯並びを目指して治療をスタートさせています。そんな意識の変化と歩調を合わせるように続いてきたのが、矯正歯科治療中の患者さんの笑顔の写真を募集するフォトコンテスト「ブレーススマイルコンテスト」(以下、ブレスマ)です。
2005年より毎年行われてきた「ブレスマ」は、残念ながら昨年は新型コロナウイルス感染拡大を避けるため中止となりましたが、今年は関係者の熱い思いを受けて復活。受賞者の表彰式も、会場に集まった関係者とオンライン形式で参加する受賞者とのハイブリッド形式を採用し、感染対策に十分注意しながら開催されました。
この応募チラシを見て「ブレスマ」に応募した人も多いのでは?
ちなみに、チラシのメインカラーは毎年の流行色から選ばれます。
2022年の流行色は、はじまりの色、「ゼロホワイト」でした。
1次、2次選考を経て受賞作を選出
「第17回ブレスマ」の応募テーマは、「もうすぐ笑顔の出番です」。
マスク生活の中で気持ちがふさぎがちな患者さんへのエールを込めたテーマです。事務局には、そんな応募テーマを反映した全国の6歳から62歳までの輝くブレーススマイルが、338作品も届きました。応募者の年代の広さは例年どおりですが、今回の特徴は、主催する公益社団法人日本臨床矯正歯科医会(以下、矯正歯科医会)の会員診療所以外の診療所や病院で治療を受けている方からの応募が目立ったこと。その数なんと、全作品中の107点。このような裾野の広がりから「ブレスマ」が着実に定着していることを感じます。
さて、集まった作品は、今回も1次審査・2次審査を経て、受賞作品が決定します。
第17回の場合、1次審査が開催されたのは2021年10月14日。審査員を務めたのは、矯正歯科医会と日本歯科矯正器材協議会、そして関係団体の方々です。審査会場の机を埋め尽くすたくさんの応募作品とコメントを1点1点、丁寧にチェックした後、12作品に絞られました。
その後、web投票にて2次審査を実施。こうした厳正な審査を経て、最優秀賞、優秀賞、北海道大会賞が決定したのです。
改めて、受賞者とその作品をご紹介しましょう。
「第17回ブレスマ」で最優秀賞に輝いたのは、埼玉県在住の松尾紗代子さん(23歳)の『いただきます!』。優秀賞には、大阪府在住の久本りかさん(49歳)の『反抗期の娘と』、「大会賞」には北海道在住の山田麻結さん(21歳)の『家族』が選ばれました。
最優秀賞 受賞作品『いただきます!』松尾紗代子さん(23歳/埼玉県在住)
優秀賞 受賞作品『反抗期の娘と』 久本りかさん(49歳/大阪府在住)
大会賞 受賞作品『家族』 山田麻結さん(21歳/北海道在住)
そして今回は、矯正装置をつけながら世界へ果敢に挑戦し、素晴らしいブレーススマイルで女子初の2冠に輝いた競泳女子日本代表で金メダリストの大橋悠依選手に「特別賞」を贈呈し、矯正歯科治療を頑張るすべて方々へ向けてコメントをいただきました(コメントは後ほどご紹介します!)
特別賞大橋悠依選手(競泳女子日本代表・金メダリスト)
入念な準備を重ねて、
いざ表彰式本番へ!
時間とともに団結力が高まって……
冒頭でお伝えしたとおり、今回は「ブレスマ」表彰式初のハイブリッド開催。
受賞者の方々はオンラインでの参加となる一方、受賞者の主治医など関係者は会場である「札幌プリンスホテル 国際館パミール」からの参加となります。例年とは異なる進行となるため、前日から入念な打ち合わせとリハーサルが重ねられました。
もちろん当日も、表彰式開催の数時間前から照明、音響、ネット回線、スクリーンなどの動作確認に加え、カメラの位置や登壇者の壇上での動き、時間配分等々、最終チェックが行われました。その間、最優秀賞の松尾さんと優秀賞の久本さんにも、モニター越しでおつきあいいただくことに。確認と微調整を重ねる中で、関係者全員の表彰式への一体感が高まっていきました。
そして、13時30分を回る頃、登壇者と運営スタッフは所定の位置にスタンバイ。いよいよ表彰式の始まりです!
「お互い頑張ろう」。大橋選手から広がるブレスマの輪
まずは、矯正歯科医会・野村泰世会長の挨拶から。その中で野村会長が「矯正歯科医療に携わる者に大きな勇気を与えてくださいました」と、競泳女子日本代表で金メダリストの大橋悠依選手を讃えた後、矯正歯科治療に励むすべての人に向けた大橋選手からの“応援コメント”が紹介され、会場からはあたたかな拍手がわきました。
続いて行われたのが、応募者をもっとも多く輩出した「最多応募診療所」の表彰です。
最多応募診療所に輝いたのは、愛知県の「いぬづか矯正歯科」。
なんと、同医院は今回で8年連続の受賞です。「これもひとえに患者さん一人一人の矯正歯科治療への意識の高さ、ならびにそれをサポートするスタッフの努力の賜物です」と院長の犬束先生。診療所を挙げて「ブレスマ」に取り組む姿勢が、毎年の最多応募につながっているようです。
矯正装置をつけて治療期間を楽しみたい、という思い
その後、舞台上で行われたのは、受賞者への表彰。
賞状と副賞は、例年なら受賞者ご本人にお渡しするところですが、今回は矯正歯科医会の関係者が壇上で賞状を読み上げます。主治医として参加した北海道大会賞の上地先生は、受賞した山田さんに代わって賞状を受け取りました。
松尾さん、久本さん、山田さん、受賞おめでとうございます!
続いて、会場とモニターから参加する受賞者をつなぐクロストークの始まりです。
今回、北海道大会賞の山田さんは、残念ながら学業の都合上欠席となりましたが、その代わりにと寄せていただいた受賞コメントが壇上から読み上げられました。
主治医・上地 潤先生のお話
マルチブラケットを自ら希望した協力的な患者さん
山田さんは協力度の高い真面目な患者さんです。大人の矯正歯科治療では、顎のスペースに歯をきれいに並べるために抜歯が必要となるケースが少なくありませんが、山田さんの場合、歯のデコボコが軽微だったため、非抜歯での治療が可能でした。また装置も、取り外しのできるアライナー(透明のマウスピース状の装置)でも治療できましたが、山田さんが希望されたのは、通常のマルチブラケット。治療中、カラーゴム(ワイヤーを固定するリガチャーにカラフルな色をつけたもの)を楽しみたかったのだと思います。今年の成人式を前にマルチブラケットを外し、今はアライナーを利用して最後の調整に入っています。
そういえば、受賞作品もピンクのカラーゴムをつけておられますね。矯正歯科治療に前向きな山田さん、とてもステキです。受賞おめでとうございます!
この後は、優秀賞の久本さん、最優秀賞の松尾さんとのクロストークの内容を、拡大版でご紹介します!
Crosstalk Interview-1
リテーナーはできる限り
長く使います!優秀賞 久本りかさん(49歳/大阪府在住)
矯正歯科治療を受けようと思った理由は何ですか?
以前から、笑顔になったとき、前歯のガタガタが目立つのがとてもイヤでした。それで娘の歯並びの悪さも気になっていて、「せめて娘だけは」との思いから治療費を貯金していました。でも、当時中学1年生だった娘は、矯正歯科治療に関心がなくて。それなら私がずっと気になっている歯並びを治そうと、その貯金で治療を始めることにしたんです(笑)。
治療を始めてみて、いかがでしたか?
長年のコンプレックスが解消できると思うと、嬉しくて嬉しくて。私は顎が小さいので、矯正装置をつける前に歯を4本抜く必要があったのですが、抜歯するときから何だかワクワクしていました(笑)。それが娘にも伝わったんでしょうね。私が治療を始めて1年後に、娘のほうから「私も治療したい」と。そこで同じ診療所で、母娘で治療を受けることになりました。
治療前、お嬢さんの歯並びはどんなふうだったのですか?
下の前歯が2本ないせいで、上の前歯が前に出っぱっている状態でした。そのため娘も上の歯を2本抜歯して、上下の咬み合わせを整えることになったのですが、私より抜歯の本数が少なかったこともあって、娘の動的治療は2021年末に終わりました。矯正装置をつけていたのは、正味2年ほどでしたね。私は今4年目に入り、最後の微調整の段階に入ったところです。
治療中、実践されていることがあれば教えてください
毎日、気がついたときに行っているのが、表情筋とハグキのマッサージですね。今は常にマスクをしているので、口もとの筋肉が硬くなりがちです。しかも、私のように40代になると、皮膚もたるみやすくなりますから、マスクの下で口を動かしたり、夜お風呂に入りながら指の腹でハグキをやさしくマッサージしたりしています。
治療をしたことで、歯に対する意識はどんなふうに変わりましたか?
歯は一生ものだと、改めて思うようになりました。娘は今、取り外しのできるリテーナー(治療後の歯並びを保つ保定装置)を食事と歯磨きのとき以外つけているのですが、その様子を見ていると、動的治療が終わったら終了ではなくて、美しい状態をキープする努力は一生必要だと感じます。
私はエステティシャンをしているので、つい美容にたとえるのですが、エステで一度きれいになっても、その後メンテナンスを続けるかどうかで持続力は違ってくるものです。きっと矯正歯科治療も同じこと。矯正装置が外れてもリテーナーはできる限り使い続けて、きれいな歯並びを保ちたいですね。
受賞作品のエピソード
去年の夏、久本さんのお店(エステサロン)の前で、知人に撮ってもらった1枚。「学校帰りの娘を呼び出して『ブレスマ』応募用に撮影してもらいました。普段、こんなに娘と顔を近づけることなんてありませんから、その意味でもとても貴重な写真です」。以来、久本さんは、この写真をスマホの待ち受けにしているのだそうです。
主治医・阿部純子先生のお話
前向きな気持ちが映し出された受賞作
久本さんは、もともと歯の健康に対する意識が高く、矯正歯科治療中も並行して一般歯科に通うなど口腔ケアにも熱心で、治療にも前向きに取り組んでくださる、まさに患者さんの鑑のような方です。また、お嬢様も動的治療中のゴム掛け(上下の咬み合わせを改善するために使用するもの。正式名称:エラスティック)もきっちりと行い、歯磨きも、いつもとても丁寧でした。そんなお二人の前向きな気持ちが映し出された写真だと思います。
受賞おめでとうございます!
Crosstalk Interview-2
矯正歯科治療は、人生最良の選択です最優秀賞 松尾紗代子さん(23歳/埼玉県在住)
矯正歯科治療を始める動機は何でしたか?
実は、矯正歯科治療はこれで2回目なんです。最初は、小学4年生のときでした。当時は外せるタイプの装置を使っていましたが、痛さに耐えられず、中学3年生のときにやめてしまいました。あのときは親に言われるまま始めたので、治療がひたすらイヤだったんです(笑)。
でも、大学生になってから自分の歯並びが気になるようになって、4年生になったばかりの2020年の春、今度は自分の意思で治療を始めることにしました。
もともとの歯並びはどんなふうでしたか?
下の歯がガタガタで、上に八重歯が2本、飛び出していました。あと親知らずが横向きに生えていて。私は顎が小さいようで、歯が全部おさまりきらなかったんです。コンプレックスでしたね。ですから友達と話していても相手の歯が気になるし、誰も自分の歯を見ているわけないと思いつつ、私としては歯を見せて笑えませんでした。
では、ブレースをつける前に抜歯もされたのですか?
はい。一般歯科で第一小臼歯(前から4番目の歯)を4本と親知らずを何回かに分けて抜きました。あのときがいちばん辛かったですね(笑)。でも、自分がやりたいって言ったんだから、頑張ろうと心を決めて臨みました。
強い決意で始められた矯正歯科治療、いかがでしたか?
大変だったのは大好きなお餅が食べられなかったことです。私は上顎に小さなネジ(矯正歯科用アンカースクリュー)を埋めていたんですが、そのネジにお餅がひっかかってしまうので、ブレースがついている間は避けていました。
逆にすごく嬉しかったのが、友達から「歯並びがきれいになったね」と言われたこと。ブレースをつけて半年経ったあたりから、自分でもプラスの変化を実感しました。
矯正歯科治療を始めてから、具体的にどんな変化を感じましたか?
治療中、歯並びが整ってくると輪郭まで変わりました。治療前と治療後の証明写真を見比べると、今のほうが顔の下半分がスッキリしています。嬉しいですね。
以前は写真を撮られるとき、口を閉じた笑顔の写真ばかりでしたが、今では思いっきり歯を見せた笑顔の写真が増えました。このきれいな歯並びを大切にしようと思いますし、治療を通して歯への意識はより高まったような気がしています。
最後に、これから矯正歯科治療を考えている人にメッセージをください
治療中は痛みがあったりもしますが、私の場合、これまでの自分の人生の中でやってよかったと思えるものの第一が、矯正歯科治療です。歯との関わりは一生続きますし、もし今、自分の歯並びが気になっているのなら、早めに行動することをおすすめします。
受賞作品のエピソード
「コロナ禍で外出が推奨されない中、久しぶりに友人とランチできるのが嬉しくて、自然に出た笑顔です」と松尾さん。受賞の知らせを受け、真っ先に写真を撮ってくれた友人に報告したところ、「あの写真からあなたの優しさが伝わったなら撮影した私も嬉しい」という温かな言葉を受け取ったそうです。
主治医・三村 博先生のお話
治療を経て以前にも増して明るく
松尾さんのお母様のご友人が当院で治療をされていた関係で、治療先を当院に決められました。矯正歯科治療が2度目ということもあり、松尾さんは“歯並びをよくしたい”というモチベーションが非常に高く、おかげで治療は順調に進みました。2020年4月に矯正装置をつけて、翌年9月に撤去。1年5か月の動的治療期間でした。この間に松尾さんは以前にも増して明るくなられたように思います。そんな気持ちの変化が、今回の受賞につながったのでしょう。最優秀賞に選ばれたのは当院としても、とても光栄なことです。松尾さん、おめでとうございます!
最後に……
「ブレスマ」はこれからも毎年開催され、今年の6月からは第18回目の応募が始まります。今、治療中の方も、これから治療を始める方も、このコンテストへの応募を、矯正歯科治療の素敵な記念にしてみませんか?
「ブレスマ」に関する詳細は、矯正歯科医会の公式サイトをご覧ください。