Vol.03 ポスト大震災。いま、自分たちにできること|vol.03 ポスト大震災。いま、できること:トレンドウォッチ:本会の活動・ニュース|質の高い矯正治療と安心の提供に努める矯正歯科専門の開業医団体「日本臨床矯正歯科医会」

Vol.03 ポスト大震災。いま、自分たちにできること

患者さんのお話
温かな支援に感謝
去年の秋に矯正治療スタート
ポスト大震災自宅近くの一般歯科で、去年の秋から娘・あやね(現在小学4年生)の矯正歯科治療を始めました。娘は乳歯のときから歯並びが悪く、幼少期からむし歯の治療やフッ素の塗布で、ずっとその歯科医院に通っていました。そして、永久歯に生え替わってからさらに歯並びがガタガタになり、先生からも矯正を勧められたので、ごく自然に治療をスタートしたという感じです。
まずは昨年11月、ガタつきがひどかった下の前歯にだけ、ブレースをつけました。あやねにとって痛みが強かったのか、歯科医院に行くといつも泣いて、2~3日続けて鎮痛剤を飲み続けなければなりませんでした。でも、歯並びを整えるためにはしかたがない、そう思っていた矢先に東日本大震災が起きたのです。自宅は福島第一原発から10キロ圏ですが、夫の会社はわずか1キロ圏。汚染がひどく、立ち入りもできず、退職するか、石川県にある支社に異動するか、どちらかを選ばなければなりませんでした。結局、着の身着のままの状態で石川県に越してきたのが3月下旬です。
治療費の返金はなし
福島県から石川県にやって来た当初はお金もないし、どうしていいかまったくわかりませんでした。 あやねの矯正治療に関しては、最初に一括で60万円を払っていたのですが、震災後、歯科医院の電話がつながらなくなり、どうなるのだろうと不安を感じていました。たまたま、他県で一人暮らしをしている大学生の長男がその歯科医院の息子さんと同級生だったので、息子さん経由で先生の携帯電話の番号を教えてもらい、なんとか奥さまとお話しできました。さっそくお電話をして返金について尋ねたところ、カルテがないとわからないというお返事でした。
そこで、一時帰宅が許されたときにカルテを見せてもらい、「治療して半年だし、この状況なので返金してほしい」と再度お願いをしましたが、娘の場合、半年間に診療時間外の通院も多かったので返金はないと言われてしまいました。
一軒づつ電話
途方に暮れながら、石川県の保健師さんに相談して、地元の矯正歯科医院のリストを出してもらい、一件ずつ電話をしましたが、たいていは「今後、治療するならまた全額必要」というお返事でした。また、何軒かのクリニックには直接あやねを連れて行ったのですが、「うちでは、もうこういう治療はしていない」「半年で60万は高い」などと言われる始末。改めて矯正歯科医院はいろいろなのだなと思いました。
いっそ、治療を中断しようか、とも考えました。なんといっても、今後の生活がどうなるのか、お金がないのが一番の不安でしたから。でもその反面、できれば治療を続けたいという気持ちも強くありました。ほかの方から見ると矯正治療は贅沢にうつるのかもしれませんが、見かねるほどひどい娘の歯並びをなんとかしてやりたかったのです。
補助金によって
そんなとき、リストを見て訪ねた医院から紹介されたのが、矯正歯科医の窪田正宏先生です。窪田先生はこちらの話を親身に聞いてくださり、「毎月2,100円の調整費のほかは全額支援する」と言ってくださいました。本当にありがたかったです。そこに窪田先生が所属する矯正歯科医会から補助がおりて、治療費(調整費)に充てられることになりました。
不思議なことに、以前はあんなに泣いて痛がっていた娘が、窪田先生のところでは一度も泣かず、痛み止めとも無縁です。おかげさまで、ガタガタだった歯並びも今では少しよくなりました。
福島県から石川県にきて、半年以上が経ちました。最初は、不安で、不安でしかたありませんでしたが、いろんな方の温かいご支援を受けて今日までやってきました。多くの方の思いによって、私たち家族が支えられているのだと、今、改めて思っています。
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