地震発生直後の様子。模型を並べた棚が倒れ、床をふさいでいる。
矯正歯科医会に加入するクリニックで東日本大震災の被害を受けたのは、宮城県と福島県にある3軒でした。いずれも、壊滅的な打撃は免れたものの、X線装置などが壊れ、カルテや模型が散乱し、数日間はクリニックを閉めざるを得ない状態に。宮城県で開業する伊藤智恵先生は、ものが散乱した診療室を片付け、壊れた機材を修理し、なんとか診療できる体制が整ったのは震災から4日後だったと話します。
「その後、電話が通じるようになってから1週間かけて患者さんの安否確認を行いました。 4月からは通常業務ができるようになりましたが、それでも戻ってきた患者さんは2割程度。家や車が流されて避難所生活を送る多くの方は、歯も磨けず、大変なストレスを抱えて暮らしていらっしゃいました」
こうした被災地の声を受け、矯正歯科医会では日本歯科矯正機材協議会の協力を得て、歯ブラシや歯磨き剤、フロス、歯間ブラシ、洗口液などを詰め合わせた「口腔ケア応援セット」3,000組を用意。4月初旬には被災地の会員の手を経て、各地区の避難所に届けられました。
左が子ども用、右が大人用にまとめられた
「口腔ケア応援セット」。
それぞれ小さな桜のシールが添えられている。
「このセットは被災者の方々に本当に喜んでいただけました。単品ではなく詰め合わせてあるので受け取ってから仕分けの手間が省けますし、セットの中に添えられた小さな桜のシールにも温かい気持ちを感じました。これだけの点数のアイテムを迅速に集め、梱包し、送るというのは、人手がないとできないこと。全国組織の矯正歯科医の団体だからこそ実現できた支援の形だと思います」
と伊藤先生。
矯正歯科医会では同時に、被災した患者さんにどのような支援ができるかについて検討を重ね、まずは応急処置対応を全国の会員クリニックに依頼。そして、避難所での生活を余儀なくされている被災患者さんを対象に、5月には「矯正歯科被災者支援フリーダイヤル」を設置(*)し、9月末までの約4か月間で計82件の相談を受け付けました。
相談内容には、「震災でリテーナー(取り外せる保定装置)を紛失したが、クリニックと連絡がつかない。どうすればいいのか?」「被災したクリニックが再開しない場合、新しい受け入れ先と、すでに支払った治療費の返金はどうなるのか?」「矯正治療がもうすぐ終わる段階で被災し、先生と連絡が取れないので、避難先にある歯科医院を受診したが、新たに治療費として約52万円かかるといわれた。被災者への治療費補助などはないのか?」など、さまざまなものがあったということです。
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