ゲスト講演
口もとのコンプレックスを解消する5つのポイントとは?
■治療を受ける前に、知っておきたい5つのこと
続くゲスト講演は、「なりたい自分への一歩、大人の女性におすすめする矯正歯科治療の実際」と題し、 宮崎晴代先生(東京歯科大学歯科矯正学講座 講師)が壇上へ。
宮崎先生は、矯正歯科専門医としての立場から、よりよい矯正歯科治療を受けるためのポイントとして5つの点を挙げ、 それぞれの説明がなされました。その要点は次のとおりです。
歯並びの治療を通して理想の自分に近づくには、治療する前にまず、正しい歯並びの基準を知っておきましょう。その上で、前後・左右・上下のバランスはどうか? 歯間のスペースは? 口もとのかたちは? 歯や歯周組織の状態は? 咀嚼(そしゃく)や会話などの機能に問題があるか? など、自分の歯並びの状態を知っておくことが大切です。
あごの発育が終わった大人の治療に用いられるのは、主にマルチブラケットという矯正装置。また、症例によっては矯正歯科治療用のアンカースクリューという金属製の小さなネジをあごの骨に埋め込み、歯を動かす際の固定源として用いることもあります。ほかにも矯正装置を歯の裏側につける方法や、マウスピースのような取り外しができる装置を使う方法など、いくつかの治療法が。
なお、矯正歯科治療では、よく噛める美しい歯列にするために、必要に応じて抜歯を行う場合もありますが、それは残った歯を健康で長持ちする状態をつくるために行われるもの。そして、矯正歯科治療で歯を動かした後は、「リテーナー」と呼ばれる保定装置を用いて、定期的に歯科医のもとでメンテナンスを受けることも大切です。
●マルチブラケットとは?
歯の表面に歯科用接着剤でブラケットという器具を貼り付け、その溝にアーチワイヤーを通して3次元的に歯を移動させるための装置。ブラケットには目立ちにくいセラミック(左)やプラスチックのほか、金属製(右)のものなどがあります。
●矯正歯科用アンカースクリューとは?
矯正歯科治療用に開発されたチタン合金製の小さなネジのこと。アンカースクリューを使った治療法とは、そのネジをあごの骨に埋め込み、歯を動かす際の固定源として用いる方法をいいます。矯正歯科治療用アンカースクリューは直径1.5 ミリ前後、長さは6 ~10ミリ程度。
写真提供:日本歯科矯正器材協議会
●歯の裏側につける装置とは?
一般的に、歯の表側につける矯正装置を歯の裏側につけることで、まわりの人に気づかれずに行えます。1970 年代、世界に先駆けて日本で実用化され、その後、世界中で用いられています。
写真提供:カボデンタルシステムズジャパン
●マウスピースのような装置を使う治療法とは?
マルチブラケットの代わりに、上下の歯に透明な薄いマウスピースのような装置をつけて歯並びを改善。歯の重なり具合があまり多くなく、歯を大きく動かす必要のない人などに用いられます。
写真提供:アソインターナショナル
80歳で20本以上、自分の歯がある高齢者のことを「8020達成者」と呼びます。この達成者の方々は咬み合わせや歯並びが整っている場合が多く、自立して生活できるなど、心身ともに健康でQOL(Quality of Life/生活の質)が高い傾向にあります。つまり、よく噛める自分の歯があることは、健康長寿の秘訣でもあるのです。このことから、矯正歯科治療は未来の健康をつくるための治療だといえます。
治療期間として数年間かかる、顎変形症などの場合を除いて健康保険が適用されないなど、矯正歯科治療にはデメリットもあるものの、整った歯並びによって笑顔に自信が持てたり、何でもしっかり噛んで食べられたりするなど、治療を受けるメリットはそれ以上に多いもの。咬み合わせが安定することで、身体のバランスがよくなったり、横顔が整ったりと、アンチエイジングの効果も期待できます。
人生には、仕事、留学、転勤、結婚、出産、育児といった、さまざまなライフイベントがあります。矯正歯科治療は、それらのライフイベントと両立できるため、始めたいと思ったときに矯正歯科医のもとを訪ね、相談してみるのがおすすめです。
ライフイベントを治療とともに過ごす、明るい笑顔の受賞作があります。
山崎梨津子さんの作品
宮崎先生の話からわかるのは、歯並びをきれいにすること=なりたい自分にすぐなれる、というわけではなく、その前に自分の歯並びや治療に関する正しい知識を持ち、この先の人生をより豊かにするための処置として、矯正歯科治療を据えることが大切だということです。そうすることではじめて、治療期間や費用の高さなどのデメリットを超えるメリットを実感できるのかもしれません。
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