アライナーを用いた不適切な治療とは?|vol.23 アライナーを使った不適切な矯正歯科治療が増えている:トレンドウォッチ:本会の活動・ニュース|質の高い矯正治療と安心の提供に努める矯正歯科専門の開業医団体「日本臨床矯正歯科医会」

アライナーを用いた不適切な治療とは?

アライナーを用いた不適切な治療とは?

■4年間アライナーのみで治療をして咬み合わせが悪化したAさんのケース
ここからは、アライナーを用いた不適切な治療について、具体的にみていきましょう。

Aさんがアライナーを用いた治療を始めたのは、2012年6月のこと。
咬み合わせの状態は、上の前歯が前方に突出し、下の前歯が舌側に倒れこんでいました。一般歯科医のもとでアライナーを用いた治療を続け、約4年後の2016年2月に治療経過に疑問を感じ、治療を中止しました。

●治療前 2012年6月
治療前

●アライナーを用いた矯正歯科治療後 2016年2月
矯正後
写真を見てわかるとおり、咬み合わせは治療前よりもひどくなってしまいました。
具体的には、奥歯の咬合面(ものを咬む面)の傾きが以前より大きくなり、治療前の段階よりも咬めなくなり、横側から見ると上下の奥歯に隙間が空いてしまっています。

従来のマルチブラケット法と異なり、アライナーによる治療は、歯が斜めに傾きながら移動することが多く、Aさんの場合も、下あごの第一大臼歯(後ろから2番目の歯)と第二大臼歯(一番後ろの歯)が著しく前に傾きながら移動したことが原因だと思われます。

アライナーを用いた矯正歯科治療によって奥歯の傾きが大きくなった
アライナー矯正によって奥歯の傾きが大きくなった

若山満教 弁護士からの提供資料を改変

■マルチブラケットを併用した治療で完治したBさんのケース

では、Aさんと似た咬み合わせの方さんが、従来のマルチブラケット法で治療をすると、どのような結果になるでしょうか。矯正歯科医会所属の矯正歯科医から提供された、Bさんの画像をもとにご説明しましょう。

●Bさん初診時 1999年12月
治療前、Bさんの咬合は上の前歯が前方に突出し、下の前歯が奥に倒れたりねじれたりしていました。比較すると、Aさんよりも不正咬合の度合いが高いといえます。
Bさん初診時

●Bさん動的治療の終了時 2003年11月
Bさんがマルチブラケットをつけて動的治療を受けた期間は約3年間。
治療後は前歯から奥歯までしっかりと上下の歯が咬み合い、安定した歯列となっています。
Bさん動的治療の終了時


知っておきたい、よい咬み合わせの5つの基準

咬み合わせに問題がないかどうかは、日常生活の中で判断ができます。
食事中や歯磨きのときなどに、確認しておきましょう。


1.上下の歯並びがおおらかなU字型である
2.上下の歯並びの中心線が一致している
3.前歯でサンドウィッチや麺類がすっと咬み切れる
4.犬歯から奥の歯が上あごの歯1本に対して、下あごの歯2本の割合で隙間なく咬み合っている
5.サイコロ状の肉を左右の奥歯でしっかりと噛める

よい咬み合わせ

★次のページでは、アライナーの適切な使用法についてご紹介!