アライナーを用いた不適切な治療とは?
■4年間アライナーのみで治療をして咬み合わせが悪化したAさんのケース
ここからは、アライナーを用いた不適切な治療について、具体的にみていきましょう。
Aさんがアライナーを用いた治療を始めたのは、2012年6月のこと。
咬み合わせの状態は、上の前歯が前方に突出し、下の前歯が舌側に倒れこんでいました。一般歯科医のもとでアライナーを用いた治療を続け、約4年後の2016年2月に治療経過に疑問を感じ、治療を中止しました。
●治療前 2012年6月
●アライナーを用いた矯正歯科治療後 2016年2月
写真を見てわかるとおり、咬み合わせは治療前よりもひどくなってしまいました。
具体的には、奥歯の咬合面(ものを咬む面)の傾きが以前より大きくなり、治療前の段階よりも咬めなくなり、横側から見ると上下の奥歯に隙間が空いてしまっています。
従来のマルチブラケット法と異なり、アライナーによる治療は、歯が斜めに傾きながら移動することが多く、Aさんの場合も、下あごの第一大臼歯(後ろから2番目の歯)と第二大臼歯(一番後ろの歯)が著しく前に傾きながら移動したことが原因だと思われます。
アライナーを用いた矯正歯科治療によって奥歯の傾きが大きくなった
若山満教 弁護士からの提供資料を改変
■マルチブラケットを併用した治療で完治したBさんのケース
では、Aさんと似た咬み合わせの方さんが、従来のマルチブラケット法で治療をすると、どのような結果になるでしょうか。矯正歯科医会所属の矯正歯科医から提供された、Bさんの画像をもとにご説明しましょう。
●Bさん初診時 1999年12月
治療前、Bさんの咬合は上の前歯が前方に突出し、下の前歯が奥に倒れたりねじれたりしていました。比較すると、Aさんよりも不正咬合の度合いが高いといえます。
●Bさん動的治療の終了時 2003年11月
Bさんがマルチブラケットをつけて動的治療を受けた期間は約3年間。
治療後は前歯から奥歯までしっかりと上下の歯が咬み合い、安定した歯列となっています。
知っておきたい、よい咬み合わせの5つの基準
咬み合わせに問題がないかどうかは、日常生活の中で判断ができます。
食事中や歯磨きのときなどに、確認しておきましょう。
1.上下の歯並びがおおらかなU字型である
2.上下の歯並びの中心線が一致している
3.前歯でサンドウィッチや麺類がすっと咬み切れる
4.犬歯から奥の歯が上あごの歯1本に対して、下あごの歯2本の割合で隙間なく咬み合っている
5.サイコロ状の肉を左右の奥歯でしっかりと噛める
★次のページでは、アライナーの適切な使用法についてご紹介!