矯正装置(ブレース)をつけて治療をしている患者さんの笑顔を募集する写真コンテスト「ブレーススマイルコンテスト」(主催:公益社団法人日本臨床矯正歯科医会/会長 野村泰世)の表彰式が、2023年2月22日(木)「グランド ハイアット 福岡」にて開催されました。2005年に始まった本コンテストも今回で第18回目。3年ぶりのリアル開催となった表彰式の様子を、受賞者へのインタビューなどを交えながらご紹介します。(記事作成 2023年3月26日)取材・文:冨部志保子(編集・ライター)
近年最多の応募数!全国から集まった394点の輝くブレーススマイルズ
マスク中だから気づかれない→ブレースをつけて堂々と!
日常生活にマスクが定着したここ数年、かねてから気になっていた歯並びや咬み合わせを改善したいと、矯正歯科治療を受ける人が増えています。その最初の想いは「マスク生活でブレースをつけていることに気づかれないから」。それが治療を続ける中で歯並びや咬み合わせが整ってくると、多くの患者さんは「うれしくて笑顔が増える」ようになり、やがて「だんだん整っていく自分の口もとを見てほしい!」というポジティブな想いへと変わっていきます。いうなれば、ブレースは自分らしく輝いて生きるための意識のあらわれのようなもの。治療を通して、ブレースは隠すものではなく、堂々と見せて笑顔になっていいのだという発想の転換が起こるのです。2005年から回を重ねてきた「ブレーススマイルコンテスト(以下、ブレスマ)」は、そうした治療中の”ポジティブな変化”を写真で表現するコンテストです。2022年夏に作品募集を行った今回の「第18回ブレスマ」には、全国の5歳から60歳の幅広い年齢層の方から394作品もの応募がありました。この数字は、ここ数年間のNo.1。しかも、今回は主催する公益社団法人日本臨床矯正歯科医会(以下、矯正歯科医会)に所属する会員以外の診療所や病院で治療を受けている患者さんからの応募が多く、全作品中128作品にのぼることから、社会の中で「ブレスマ」が定着してきたことがうかがわれます。
第18回の応募チラシ。歯科診療所などでこのチラシを受け取って応募した人も多いはず
「第18回ブレスマ」の選考の舞台裏をご紹介!
そうして集まった作品の中から、受賞作品はどうやって決まるのでしょうか?事務局に寄せられた応募作品は、毎回、一次・二次という2回の審査で選考されます。今回、一次審査が開催されたのは、2022年9月15日。長机の上いっぱいに応募作品と応募コメントを並べ、それを矯正歯科医会の担当者や関係団体の代表者らが1点ずつ丁寧に目を通したうえで、入選12作品に絞られました。どの作品も魅力的なため、この作業は毎年楽しくもあり、悩ましくもある時間。すべての作品に目を通していると、時間があっという間に過ぎていきます。特に今回は審査の後、「写真の質が高いので、最優秀・優秀・大会賞以外の賞を設けては?」など、集まった審査員の方々から今後の「ブレスマ」についての前向きな意見がたくさん出されたのが印象的でした。その後、秋に開催された日本矯正歯科学会の会場と矯正歯科医会のホームページ上で実施された投票形式による二次審査を行い、今回の受賞作品が決定しました。
改めてご紹介しましょう。「第18回ブレスマ」の応募テーマは、「さあ、笑顔を解き放とう!」。選考ポイントの一つは未来に向けるウキウキ気分をいかにその人らしく表現しているか、でした。このテーマのもと最優秀賞に輝いたのは、兵庫県在住の田中雲雀(ひばり)さん(16歳)の「押忍」です。そして「優秀賞」には、埼玉県在住の我妻ゆきのさん(24歳)の「私の夏休み〜2022〜」が、「大会賞」には福岡県在住の佐藤真夕さん(16歳)の「GROW UP!」が選ばれました。
最優秀賞『押忍』田中雲雀さん(兵庫県在住)
優秀賞 受賞作品『私の夏休み〜2022〜』我妻ゆきのさん(埼玉県在住)
大会賞『GROW UP!』 佐藤真夕さん(福岡県在住)
受賞作品は、どれも自分らしく日常を輝いて生きていることがまっすぐに伝わる写真ばかり。田中さん、我妻さん、佐藤さん、受賞おめでとうございました!
受賞者全員が出席し、なごやかに行われた表彰式
入念な準備のもと、いざ本番へ
受賞作品の選考が決まり、受賞者への連絡、メディアへの発表などが終わると、今度は表彰式の準備に入ります。これまで「ブレスマ」では、受賞者の皆さんを招いて表彰式を開催していました。しかし、2021年の「第16回」はコロナ禍により初の中止に。そして、翌年の「第17回」は会場に集まった関係者とオンライン形式で参加する受賞者とのハイブリッド形式での開催となっていたため、通常の表彰式は今回の「第18回」が実に3年ぶり。満を持しての開催に、関係者のテンションもいやが上にも高まります。表彰式の会場は、福岡・博多の複合施設「キャナルシティ博多」に併設する「グランドハイアット福岡」。今回も、主催する矯正歯科医会学術大会の期間中の開催となりました。晴天に恵まれた2月22日午前10時すぎ。会場であるホテルの控え室に受賞者の皆さんが続々と到着します。本番は13時20分からですが、3時間も前に集合していただくのは、すべてステージ上でのパフォーマンスを高めてもらうため。壇上のクロストーク(ミニインタビュー)を想定し、各人に矯正歯科治療についての思いをうかがい、皆で昼食をとるなどして、まずはゆっくりと過ごしていただきます。
その後、本番を想定した通しのリハーサル。司会役、花束を渡す係、壇上で受賞者をアテンドする係等々、各担当者の動きについても入念に最終チェックを行い、いよいよ本番スタートです!
受賞者の素顔がのぞいたクロストーク
表彰式の始まりは、矯正歯科医会 野村泰世会長の挨拶から。治療中に笑顔になることの大切さを説き、受賞者をたたえた後、次の「最多応募診療所」の発表へとバトンをつなぎます。
最多応募診療所とは、「ブレスマ」への応募が最も多かった会員診療所のこと。今回は、それぞれ27名の患者さんからの応募があった2軒の診療所が選ばれました。
福岡「ながやま矯正歯科クリニック」永山 哲聖先生からのコメント
「今年は主催する矯正歯科医会の発足50周年にあたる記念の年。節目の年を少しでも盛り上げたいと『ブレスマ』の声かけを熱心に行いました。その言葉を受けて患者さんが応募してくれたことに改めて感謝です」
島根「出雲おおさわ矯正歯科」大澤雅樹先生からのコメント
「『治療中の最高の思い出になりますよ!』と患者さんに言葉をかけましたが、まさか当院が最多応募診療所に選ばれるとは思いませんでした。北九州の永山先生と同時に選ばれたことも光栄です」
さて、次はいよいよ受賞者の表彰です。まずは九州大会賞に選ばれた佐藤真夕さんがステージ中央で賞状と副賞、大きな花束を主治医から受け取ります。続いて、優秀賞の我妻ゆきのさんも賞状と副賞、主治医からの花束を受け取り、素敵な笑顔を見せてくれました。
そして最後は、最優秀賞に輝いた田中雲雀さんがステージ中央に。野村会長から賞状と副賞が授与され、主治医から「おめでとう!」の言葉とともに花束が贈呈されました。
続くクロストークは、インタビュアーの質問に受賞者が答えていくというもの。そのやりとりから受賞者の素顔がのぞき、より親近感がわいてきます。
舞台裏インタビュー治療への想い、将来の夢……。表彰式の前にうかがった受賞者のリアルな声をご紹介します
将来の夢に向かって、今はワクワクした気持ちです最優秀賞『押忍』 田中雲雀さん
空手は5歳くらいから始めて、10年以上続けています。私がやっているのは「フルコンタクト空手」といって、結構ハードな、戦う空手です。普段の練習で組む相手は小学生から大人まで年齢層が幅広く、男女も関係ありません。だからケガはしょっちゅうですが、試合で優勝できたときは達成感があり、それがやりがいになっています。受賞作品で私の後ろに写っている賞状やトロフィーは、これまでの成果の一部。なかには大きな大会のトロフィーもあるんですよ。矯正歯科治療は、6歳下の妹が先に始めていて、私も通いたいなと思いました。私はもともとちょっと出っ歯で、下の歯もガタガタしていて、それがコンプレックスで歯を見せて笑うことができませんでした。だから治療できるのは嬉しいのですが、ブレースをつけてすぐの頃は痛くてご飯が食べられず、空手にもなかなか集中できませんでした。でも、だんだん痛みにも慣れ、今では歯並びも揃ってきたのでワクワクしています!私のやっている空手では蹴り技というのがあって、顔に当たると口の中が切れたりブレースが取れたりするので、練習では技を受けないようにするのに必死です。おかげで治療を始めてから一度もあたっていません。これからも空手を続けて、きれいな歯並びになって、将来は清野菜名さんみたいなアクション女優になるのが夢です!
コンプレックスだった歯並びに自信がつきました優秀賞『私の夏休み〜2022〜』 我妻ゆきのさん
以前の歯並びは上の前歯が内側にねじれたように生えていて、高校の頃からそれがコンプレックスで、歯を見せて笑うことができませんでした。それに歯並びが悪いせいで、むし歯ができやすく、子どもの頃からよく歯医者さんに通っていました。そんな私なので、矯正歯科治療は以前から受けたかったのですが、費用が高いというイメージがあって。私は両親から「自分のことは自分でやりなさい」といわれて育ったので、社会に出て自分でお金を出せるようになった22歳から治療をスタートしました。でも、いざ始めると口内炎ができたり、ものが食べにくかったり(笑)。それでも、治したい気持ちのほうが強いので乗り越えられます。今はまだ治療中ですが、歯並びが整い、咬み合わせも安定したので、もう口もとはコンプレックスではなく、自信を持って笑顔になれます。そんな想いが今回の受賞した写真にもあらわれているのでしょうね。かつての私なら、応募写真のような笑顔には絶対になれませんでした。自然に笑えるって、とっても大きな変化だと思います。
二度目の応募で受賞できて嬉しいです大会賞『GROW UP!』 佐藤真夕さん
私が手にしているは、今から6年前の、小学4年生のときの写真。きょうだい3人で一斉に矯正歯科治療を始めて2年目くらいのときです。その後、中学になっていったん装置を外し、高校1年の夏にマルチブラケットをつけた二期治療が始まりました。治療を始めた頃は自分の歯並びにまったく関心がなく、「痛いのが始まる」くらいの感覚でしたが、今はやっておいてよかったとすごく思います。歯並びが整うと横顔もきれいになるし、笑った顔にも自信が持てますから。実は、6年前にも「ブレスマ」に応募したことがあるんです。そのときは残念ながら受賞できませんでしたが、今回、昔の写真と今の写真で受賞できて嬉しいです。私たちは三つ子ですが、歯並びも性格もそれぞれ違います。きょうだいゲンカもしょっちゅうですが、こうして昔の写真を見ると3人の顔の距離が近くて仲がよさそう。今は少し間隔が空いていて、ちょっと大人になったかな(笑)。
最後に……
「ブレスマ」はこれからも毎年開催され、2023年の夏には第19回目の応募が始まります。今、治療中の方も、これから治療を始める方も、このコンテストへの応募を、矯正歯科治療中の思い出のひとつにしてみてはいかがでしょう。「ブレーススマイルコンテスト」に関する詳細は、日本臨床矯正歯科医会の公式サイトをご覧ください。