■本来あるべき永久歯のない子が増えている
3歳くらいで完成するといわれる乳歯の歯並び。乳歯がすべて生えそろうと、口の中には20本の歯が並ぶことになります。それが6歳から12歳くらいにかけてあごの成長とともに永久歯へと生えかわり、親知らずを除くと28本の歯並びに。永久歯に生えかわるスピードには個人差があるため、人より1~2年遅くても早くても心配無用ですが、乳歯がいつまでも残っている場合は注意が必要です。
●歯の並び方と名称
というのも乳歯は、あごの骨の中で育ってくる永久歯の歯胚(しはい/永久歯の芽)に押されるかたちで歯の根が吸収されて短くなり、やがて抜け落ちるため。つまり、いつまでも乳歯が残っているということは、乳歯の下に本来あるべき永久歯がない可能性があるわけです。このように、永久歯が生まれながらにない場合を「先天性欠如」といいます。
ヨーロッパ矯正歯科学会が2006年に調べたところ、この先天性欠如は近年増加傾向にあるという結果が出ています。
■前から2番目・5番目の永久歯が足りないケースが多い
では、どのくらいの子どもに先天性欠如があるのでしょうか。
日本小児歯科学会が2007~2008年にかけて行った全国調査「永久歯先天欠如の発生頻度に関する調査研究」をみると、歯科を受診した7歳以上の子ども1万5,544人(男子7,502名、女子8,042名)のうち、乳歯の先天性欠如があったのは75人(0.5%)、永久歯の先天性欠如があったのは1,568人(10.1%)となっています。
また、永久歯の先天性欠如は男子(9.1%)より女子(11.0%)がわずかに多く、上あごだけに欠如がある場合は2.5%、下あごだけにある場合は5.7%、上下のあご両方にある場合は1.9%。歯の種類別では、前から5番目(第2小臼歯)と前から2番目(側切歯)の欠如が多いという結果が出ています。
■放置すると歯並びが崩れる要因に
永久歯が先天的に欠如していると、大人になっても永久歯が生えるべき場所に乳歯が残ったままになります。
乳歯が残っても、咬み合わせとして機能する分には問題ありませんが、乳歯は永久歯よりエナメル質や象牙質が薄く、歯の根も短いため、残念ながらあまり長持ちはせず、二十歳前後で抜けてしまうことも少なくありません。
そして、抜けた後そのままにしていると、周辺の歯が動いたり倒れこんだりして、歯並びや咬み合わせを崩す要因となってしまうのです。それだけでなく、あごの成長に悪影響を与えたり、顎関節症などにつながったりする可能性も。また、前歯の隙間や乳歯の見た目を気にして社会生活に消極的になるなど、心理面での影響も見逃せません。
先天性欠如歯の本数は、1~2本のことが多いものの、まれに10本以上欠如する場合もあります。そうなる原因として遺伝や全身疾患、薬の副作用などが影響しているのではないかと考えられていますが、現状でははっきり解明されていません。
さて、あなたのお子さんの歯は大丈夫でしょうか? この機会に、ぜひチェックしてみましょう。
★次のページでは、先天性欠如の有無を見分ける方法と、その後の対処法などについてご紹介!
ご存じですか?10人に1人の子どもに”足りない歯”があるってこと
■まずは7歳までにパノラマエックス線写真で確認を
国内最大の矯正歯科専門開業医の団体である公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会(以下、矯正歯科医会)では、永久歯の先天性欠如の有無を確認するための方法として、7歳までに歯科医院(一般歯科、矯正歯科)を受診し、あごの骨全体を撮影できるパノラマエックス線写真(口の中全体を1枚のエックス線写真で撮影する方法)で確認するよう提案しています。
一般的に、子どもに対するパノラマエックス線写真は健康保険の対象外となることが多く、その場合、撮影するには3,000~5,000円ほど費用がかかりますが、これを撮ることで生えかわりが順調に進んでいるか、あごの骨の中に異常がないかなど、口の中全体の歯や骨の状態がわかり、お子さんの歯の生えかわりを予測・観察しながら歯を健康に保つのに役立ちます。
もし、先天性欠如が見つかったら、歯科医院で治療に関する長期的な治療計画(対処法)を立ててもらいましょう。
考えられる計画としては、将来、矯正歯科治療で永久歯のない部分のスペースを閉じてしまう、乳歯をできるだけ長く使った後にブリッジやインプラントで永久歯のない部分を補う、あるいは両方をミックスする場合もあるでしょう。
また、治療計画と同時に、治療を行う最適な時期やその時期までの注意事項も、歯科の先生から教えてもらうことをおすすめします。
そのうえで、残っている乳歯を永久歯の代わりの歯として大切に使いながら、歯並びや咬み合わせに問題が生じないように管理を続けることが大切です。
残っている乳歯をできるだけ長持ちさせる
永久歯と比べて乳歯は、いったんむし歯になると進行しやすく、また歯の根も短いため、できるだけ長持ちさせるためには歯科医院で定期的にケアを受けることが大切です。
矯正歯科治療を行い、咬み合わせを安定させる
生えるべき永久歯がすべて生えたら、矯正歯科治療を受けて歯と歯の間のスペースを閉じ、よくかめる安定した咬み合わせをつくります。
また、残った乳歯を抜いて、そのスペースを矯正歯科治療で閉じてしまうこともあります。
矯正歯科治療+補綴歯科治療で咬み合わせを安定させる
乳歯がダメになったら、矯正歯科治療や補綴歯科治療(ほてつ/歯の代わりに人工の歯をつくって入れる治療)などを行い、咬み合わせを安定させることもできます。
※対処方法は年齢や歯の状態によって変わります。
■6本以上の先天性欠如なら、矯正歯科治療が保険適用に
矯正歯科治療とは、歯の位置やあごの骨を、ある程度の時間かけてゆっくりと変化させ、乱ぐい歯や受け口、上顎前突といった問題のある歯並びを治し、よくかめる、安定した咬み合わせをつくるものです。
この治療は一般的に自費診療ですが、実は、厚生労働省が定めた特定の症状に限って健康保険が適用されます。従来、口唇口蓋裂などの先天性異常と顎変形症のみが健康保険適用の対象でしたが、2年前の2013年度から、6本以上の先天性欠如歯がある場合、「指定自立支援医療機関(育成・更生医療)」の指定を受けている矯正歯科診療所あるいは病院での治療に限って、健康保険が適用されるようになりました。
6本以上の先天性欠如が健康保険の適用になったことで、これまで費用が高くて治療できずにいた人にとって、矯正歯科治療がぐっと身近になったわけです。
該当する診療所は、以下より探すことができます。
★矯正歯科を探すならここをチェック!
■先天性欠如の治療例を見てみよう
では、実際に先天性欠如を矯正歯科治療で治したケースを見てみましょう。
下の左5番(第2小臼歯)の永久歯1本が先天性欠如だった11歳のAさん(女性)。FKOという装置を併用して、下の左6番(第1大臼歯)のみを移動させ、空いたスペースを閉じていきました。
上の右2番(側切歯)1本が先天性欠如だった12歳のBさん(男性)。矯正歯科治療で将来の補綴歯科治療のためのスペースを確保し、歯列を整えた後に仮歯を装着。その後、あごの骨や歯ぐきが安定した24歳でインプラントを埋入して咬み合わせを完成させました。
どちらの方法にも一長一短があり、どの治療法が向くかは一概にはいえませんが、先天性欠如は、あごが成長する幼児期から適切にチェックしていくことがとても大切。ぜひ、7~9歳を目安に歯科医院を訪ね、生えかわりが順調かどうかをパノラマエックス線写真で確認してもらいましょう。
★次のページからは、実際に治療中の方にインタビュー!
ご存じですか?10人に1人の子どもに”足りない歯”があるってこと
- 永久歯が6本足りない先天性欠如で、6歳の頃から矯正歯科に通っているという川田さん。ブレースが取れた今も、年に3回は矯正歯科で歯のチェックを受けるという彼女に、これまでの治療と歯並びの大切さについてうかがいました。
矯正歯科で先天性欠如が発覚
もともと私の母が、大人になってから矯正治療を受けたんです。それで私の乳歯の生え方がおかしいことが気になったようで、小学校にあがってすぐに矯正歯科に連れて行かれました。エックス線写真で調べてもらったところ、上の左側1番(中切歯)と下の左側3番(犬歯)、そして上下の両側5番(第2小臼歯)の永久歯、計6本の永久歯がない状態でした。それがわかってからは3ヵ月に一度くらいのペースで矯正歯科に通って、歯の生えかわりの状態などをチェックしてもらっていましたね。
よく歯医者さんに行くのを怖がる人がいますけど、私の場合は、矯正歯科で痛い思いをすることはなかったので、歯科医院=コワイという感覚がまったくなくて(笑)。いつも習い事に行くような気分で通っていました。
二十歳まで乳歯を残すのが目標
実際に、矯正治療(第1期)が始まったのは、小学3年になってから。最初は、内側に引っ込んだ歯を表に出すために「リンガルアーチ」という装置を歯の裏側につけました。慣れるまでは痛みも少し気になりましたが、そういうときは先生がやさしく声をかけてくださったり、矯正治療の経験者である母が、やわらかい食事を用意してくれたのでなんとか乗り切ることができました。
当時は永久歯が生え揃わないせいで歯と歯の間に隙間があって、むし歯もちょっとありました。でも、矯正治療を始めて、しっかり歯を磨くようになってからは、むし歯はゼロ。矯正歯科の先生から「今残っている乳歯を二十歳まで残そうね」とよくいわれていたので、自分でも自然に乳歯を大事にしなきゃ、という気持ちになったんだと思います。
目標達成した今の思い
第1期の治療が終わったのは中学2年のときです。その後、14歳から上の左側1番と下の左側3番の乳歯を入れた状態で第2期の矯正治療を始めて、5年前にそれも終わりました。今は夜寝るときにだけリテーナー(動かした歯を保つ装置)を使っています。
2本の乳歯は、21歳になった今も、まだ残っているんですよ。この2本の乳歯をできるだけ長持ちさせたいですね。乳歯は永久歯より小さくて弱いので、歯磨きするときも、できるだけやさしく、でもきちんと磨くようにしています。食事をするときも、乳歯に負担がかからないように気をつけていますよ。
将来、乳歯がいよいよダメになりそうになったら、矯正歯科の先生と相談して、そのときの自分にいちばんいい治療法を選ぶつもりです。私の場合、健康保険の適用前から治療していたので、これまでにかかった費用は大きいと思いますが、その分、これからも自分の歯に意識を向け、大切にしていきたいと思っています。
余談ですが、大学を卒業したら小学校の先生になるつもりです。目標は、熱くて、子どもに頼られる先生(笑)。仕事を通して、子どもに歯の健康について伝えていきたいと思っています。
●現在の歯並び
ご存じですか?10人に1人の子どもに”足りない歯”があるってこと
- 患者さんの二人目は、永久歯が11本足りなかったというS.Nさん。6本以上の先天性欠損が健康保険の適用対象となった2年前から矯正歯科治療を始め、現在もまだ治療中です。治療に至る経緯や現状についてうかがいました。
健康保険の適用が治療のきっかけに
生まれつき永久歯が11本少ないことに気づいたのは、10歳くらいです。かかりつけの一般歯科で、むし歯治療のためにエックス線写真を撮って判明しました。当時はまだ子どもだったので、「治療は二十歳になってからにしよう」と先生からいわれていましたね。
そして大学生になってから、その先生の紹介で、ある大学病院に行ったんです。そこでは「抜歯してインプラントを入れてはどうか」という提案を受けたんですが、入れる数が多いので何百万も費用がかかるし、どうしようかなと……。
かかりつけ医に相談すると、今度は矯正歯科専門の診療所を紹介していただきました。診療所に行って話を聞いて、「治すなら矯正治療で」と思ったんですが、当時はまだ6本以上の先天性欠如が保険適用になっていなかったこともあって、やはり費用がネックで、なかなか踏み込めずにいたんです。
そんなあるとき、矯正歯科の先生から連絡があって、6歯以上の先天性欠如に健康保険が適用になったことを知りました。今から2年前、ちょうど僕が二十歳のときです。これでようやく治療できる! と、すごくうれしかったですね。
将来的なインプラントも視野に入れて
実は、矯正治療を始めるまで9本の乳歯がほぼ残っていたんです。これは矯正歯科の先生にも驚かれました。10歳で永久歯が足りないのがわかってから、月に一度はかかりつけの歯科医のもとでクリーニングやフッ素塗布を受けたせいかも知れません。
矯正治療で咬み合わせを整えるために、僕の場合は乳歯を4本抜きましたが、今も5本の乳歯が口の中にあります。将来、これらの乳歯がダメになったら、そこにインプラントを入れようかなと今は思っています。
単に乳歯を抜いてインプラントにするのだと、本数も多く必要なので何百万もかかりますが、矯正治療をして歯列を揃えてからインプラントにするとより少ない本数で済みますし、安定した咬み合わせの中に入れるので、インプラントの持ちもよくなるんじゃないかと思っています。それに、僕の場合は矯正治療に保険が効くので、その後の補綴(ほてつ)治療に費用がかけられ、また選択肢が広がるのがありがたいですね。
●治療前と現在の歯並び
ゴールに向かう今の気持ち
今、矯正治療を始めて2年目で、終わるまでにはまだまだ時間がかかりそうです。治療後に、歯の隙間を埋める人工的な処置が必要なことを考えると、折り返し地点にも到達していないんでしょうね。ブレースがついていると、パスタや麺類を食べるとみごとにはさまるので、周囲を気にしなきゃいけない場では控えています。バジルも禁物ですね(笑)。
日々の歯磨きも大変ですが、少しずつ歯並びがよくなっていくのは、やっぱりうれしいことです。以前は前歯が出ていたので、大きな口を開けて笑えなかったんですが、治療中の今は笑えますし、始めてみると矯正治療って特別なことではないと思うようになりました。治療が終わったら、小学校の頃からやっているバスケを思いっきりやるつもりです!
Vol.03 ポスト大震災。いま、自分たちにできること
「約2年半」。これは成人が矯正歯科治療のブレース(矯正装置)を装着する平均的な期間です。人生の中ではわずかな期間ですが、この間に転勤や進学、結婚など、治療開始時には思いもしなかった転機を迎え、やむを得ず通院先を変えねばならない場合があるかもしれません。そんなとき、新しい土地で治療先を探すのは大変なもの。ましてや今回のような災害によって、住み慣れた場所を離れなければならないとなると、なおさら転医先探しが負担になるのではないでしょうか。
日本臨床矯正歯科医会(以下、矯正歯科医会)では、そうした状況に備え、転居などで通院先が変わっても患者さんが安心して治療を継続できるよう、2006年に独自の「転医システム」を構築しました。その転医システムとは、北海道から沖縄まで全国約500名におよぶ会員(矯正歯科医)ネットワークを生かし、主治医が患者さんの転居先にできるだけ近い、信頼できる矯正歯科専門開業医を紹介するというもの。その際、治療費の過不足についても同会の取り決めに沿って精算されます。
「本来、治療計画や治療方針、料金システムは先生によって異なります。ですから、途中で別のクリニックに変わるのは避けられるなら避けた方がいい。ただし、有事の際にはそんなことは言っていられません。実際、今回の震災では、うちから他県のクリニックに10数名の患者さんが転医しました」
と話すのは、福島県で開業する清水義之先生。
清水先生は、進学や就職などで毎春3~4人の転医はあるものの、ここまで一気にというのは初めてだとした上で、
「それでも会員同士のコンセンサスがあらかじめとれていたことで、新しいクリニックへの引き継ぎはスムーズに進みました。どんなときでも患者さんに安心を提供できるネットワークがあるのは、やはり重要だと実感しましたね」
と語ります。
矯正歯科医会では、転移システムを整備するとともに、北海道、東北、北関東…と、全国を13支部に分け、各支部の会員同士が親睦を深めることにも注力。会員同士が日頃から交流をもつことで、「万が一」の際、互いに助け合える関係づくりを行ってきました。こうした地道な取り組みが、今回の震災で力を発揮したのです。
次のページでは、ネットワークを生かした被災地支援の実際をご紹介します。
Vol.03 ポスト大震災。いま、自分たちにできること
地震発生直後の様子。模型を並べた棚が倒れ、床をふさいでいる。
矯正歯科医会に加入するクリニックで東日本大震災の被害を受けたのは、宮城県と福島県にある3軒でした。いずれも、壊滅的な打撃は免れたものの、X線装置などが壊れ、カルテや模型が散乱し、数日間はクリニックを閉めざるを得ない状態に。宮城県で開業する伊藤智恵先生は、ものが散乱した診療室を片付け、壊れた機材を修理し、なんとか診療できる体制が整ったのは震災から4日後だったと話します。
「その後、電話が通じるようになってから1週間かけて患者さんの安否確認を行いました。 4月からは通常業務ができるようになりましたが、それでも戻ってきた患者さんは2割程度。家や車が流されて避難所生活を送る多くの方は、歯も磨けず、大変なストレスを抱えて暮らしていらっしゃいました」
こうした被災地の声を受け、矯正歯科医会では日本歯科矯正機材協議会の協力を得て、歯ブラシや歯磨き剤、フロス、歯間ブラシ、洗口液などを詰め合わせた「口腔ケア応援セット」3,000組を用意。4月初旬には被災地の会員の手を経て、各地区の避難所に届けられました。
左が子ども用、右が大人用にまとめられた
「口腔ケア応援セット」。
それぞれ小さな桜のシールが添えられている。
「このセットは被災者の方々に本当に喜んでいただけました。単品ではなく詰め合わせてあるので受け取ってから仕分けの手間が省けますし、セットの中に添えられた小さな桜のシールにも温かい気持ちを感じました。これだけの点数のアイテムを迅速に集め、梱包し、送るというのは、人手がないとできないこと。全国組織の矯正歯科医の団体だからこそ実現できた支援の形だと思います」
と伊藤先生。
矯正歯科医会では同時に、被災した患者さんにどのような支援ができるかについて検討を重ね、まずは応急処置対応を全国の会員クリニックに依頼。そして、避難所での生活を余儀なくされている被災患者さんを対象に、5月には「矯正歯科被災者支援フリーダイヤル」を設置(*)し、9月末までの約4か月間で計82件の相談を受け付けました。
相談内容には、「震災でリテーナー(取り外せる保定装置)を紛失したが、クリニックと連絡がつかない。どうすればいいのか?」「被災したクリニックが再開しない場合、新しい受け入れ先と、すでに支払った治療費の返金はどうなるのか?」「矯正治療がもうすぐ終わる段階で被災し、先生と連絡が取れないので、避難先にある歯科医院を受診したが、新たに治療費として約52万円かかるといわれた。被災者への治療費補助などはないのか?」など、さまざまなものがあったということです。
次のページでは、歯科を取り巻く今後の課題についてご紹介します。
Vol.03 ポスト大震災。いま、自分たちにできること
宮城県で開業する曽矢猛美先生は、今回の震災で矯正歯科医としてというより、一人の歯科医として、非常時に何ができるのかを見つめ直したと話します。
「やはり、歯科医である自分にできるのは口腔ケアです。今回の大震災では、津波で亡くなったご遺体の収容が大規模なために、身元が判明しないまま火葬しなくてはなりませんでした。
そんな中、私は自分にできることとして宮城県歯科医師会からの派遣で行方不明者の検視をしたり、石巻日赤病院で口腔ケアを行ったりしました」
その中で必要だと感じたのは、歯を通じた個人識別システムの構築でした。
他地区の歯科医師会や大学などから、
宮城県歯科医師会に届いた支援物資の一部。
「目視で判別できない場合、指紋検査、歯科情報検査、DNA検査が行われますが、ご遺体の状態によっては指紋の採取が難しくなります。かといって、DNA検査は照合装置が少なければ時間も費用もかかってしまう。
一番安価で確実なのは、歯科情報です。自治体ごとに歯科検診のデータをデジタル化して、どこかのサーバにあげて備蓄しておき、なにかのときに照合できるシステムを構築する必要があると強く感じました」
今回は、沿岸部にある歯科医院が津波で被災し、生前の歯科カルテが大量に失われてしまったため、歯の照合も思うように進まなかったと言われています。災害時における歯科情報は、家族と本人を結ぶ大切な最後の絆。この大震災を契機に、歯による個人識別システムを確立することが、津波で人生を突然たたれてしまった方々への最大の供養ではないかと、曽矢先生は語ります。
宮城県多賀城市七ヶ浜にある、
津波に襲われた幼稚園に支援に行ったときの写真。
背景は、がれきの山。その前に幼稚園があった。
「園児が亡くならなかったことにほっとし、
『こんにちは』『ありがとう』の声に、かえって励まされました」(曽矢先生)
「緊急時の対応はスピードが命。速やかに行わなければ意味がありません。
その点、矯正歯科医会の有志が被災地に何がほしいかを聞き、必要とされるものを用意して、パッケージにして送った『口腔ケア応援セット』はよかったと思います。
そのとき現地が求めるものを、相手に負担をかけない形でサポートするのがボランティアの精神ですから」
必要な手を必要なところにさしのべるには、相手の状況を正しく知ることが大前提。その上で、専門の異なる歯科医や医師が連携して、患者さんのケアにあたることも重要です。人と人、分野と分野の壁を取り外し、専門性を生かしながら、いかに関わるかを考えること。本当に求められる支援の形は、そこから生まれるのかもしれません。
次のページでは、会という枠組みを度外視して実施されている矯正歯科医会の治療費補助の取り組みをご紹介します。
Vol.03 ポスト大震災。いま、自分たちにできること
矯正歯科医会は6月、矯正歯科治療中に被災し、金銭的に治療の継続が困難になった患者さんを対象に、治療継続に必要な診療費の補助を行うことを発表しました。
矯正歯科医会が実施する治療費補助は、2011年6月、新聞などのメディアを通じて全国に告知された。
補助の対象となるのは、自宅が半壊、半焼以上の被害を受けたり、世帯主が死亡や重傷、行方不明、失業、廃業、休業している、もしくは原発事故で政府の避難指示の対象となっている患者さんで、一人につき10万円を上限に補助されます。総額1,000万の予算を投じて行われるこの補助金制度のポイントは、同会の会員クリニック以外で矯正歯科治療を受けていた患者さんも対象になるという点。10月現在、すでに71名からの補助申請の申し込みが寄せられ、38名への補助が確定しています。
前出の伊藤先生は、
「被災して困っている患者さんからお金をいただくつもりは、もともと一切ありませんでした。でも、『費用はいりません』と言うと、患者さんは遠慮されます。そして、先生のご迷惑になるなら治療はやめようかと思ってしまわれるかもしれません。実際、『大丈夫ですよ。矯正歯科医会から材料費の支援がありますから。こちらのことはご心配なく』と言うと、皆さん一様にほっとした顔をされるんです。患者さんのそんな表情をみると、この治療費補助のおかげで、患者さんは治療を諦めずに踏ん張る決意を固めてくれたと嬉しくなります」
と話します。
そして、清水先生もこう語ります。
「うちからは20数名の患者さんの補助申請をしています。お一人10万円の補助は大きいですよ。患者さんは皆さん、こうした制度があることを喜んでおられます。私自身、まるで家族のように心配してもらえることで、困難な状況でも患者さんへのよりよい治療につなげようという思いがわいてきます」
一人ではできないことも、団体でなら可能になる。同じ専門家同士のネットワークだからこそ、被災した場合の困難が理解できる。お互い様の精神で助け合う姿勢が、ひいては患者さんへの質の高い治療の維持することにもつながるのです。
次のページでは、実際に治療費補助の申請を行った患者さんのお話をご紹介します。
Vol.03 ポスト大震災。いま、自分たちにできること
自宅近くの一般歯科で、去年の秋から娘・あやね(現在小学4年生)の矯正歯科治療を始めました。娘は乳歯のときから歯並びが悪く、幼少期からむし歯の治療やフッ素の塗布で、ずっとその歯科医院に通っていました。そして、永久歯に生え替わってからさらに歯並びがガタガタになり、先生からも矯正を勧められたので、ごく自然に治療をスタートしたという感じです。
まずは昨年11月、ガタつきがひどかった下の前歯にだけ、ブレースをつけました。あやねにとって痛みが強かったのか、歯科医院に行くといつも泣いて、2~3日続けて鎮痛剤を飲み続けなければなりませんでした。でも、歯並びを整えるためにはしかたがない、そう思っていた矢先に東日本大震災が起きたのです。自宅は福島第一原発から10キロ圏ですが、夫の会社はわずか1キロ圏。汚染がひどく、立ち入りもできず、退職するか、石川県にある支社に異動するか、どちらかを選ばなければなりませんでした。結局、着の身着のままの状態で石川県に越してきたのが3月下旬です。
福島県から石川県にやって来た当初はお金もないし、どうしていいかまったくわかりませんでした。 あやねの矯正治療に関しては、最初に一括で60万円を払っていたのですが、震災後、歯科医院の電話がつながらなくなり、どうなるのだろうと不安を感じていました。たまたま、他県で一人暮らしをしている大学生の長男がその歯科医院の息子さんと同級生だったので、息子さん経由で先生の携帯電話の番号を教えてもらい、なんとか奥さまとお話しできました。さっそくお電話をして返金について尋ねたところ、カルテがないとわからないというお返事でした。
そこで、一時帰宅が許されたときにカルテを見せてもらい、「治療して半年だし、この状況なので返金してほしい」と再度お願いをしましたが、娘の場合、半年間に診療時間外の通院も多かったので返金はないと言われてしまいました。
途方に暮れながら、石川県の保健師さんに相談して、地元の矯正歯科医院のリストを出してもらい、一件ずつ電話をしましたが、たいていは「今後、治療するならまた全額必要」というお返事でした。また、何軒かのクリニックには直接あやねを連れて行ったのですが、「うちでは、もうこういう治療はしていない」「半年で60万は高い」などと言われる始末。改めて矯正歯科医院はいろいろなのだなと思いました。
いっそ、治療を中断しようか、とも考えました。なんといっても、今後の生活がどうなるのか、お金がないのが一番の不安でしたから。でもその反面、できれば治療を続けたいという気持ちも強くありました。ほかの方から見ると矯正治療は贅沢にうつるのかもしれませんが、見かねるほどひどい娘の歯並びをなんとかしてやりたかったのです。
そんなとき、リストを見て訪ねた医院から紹介されたのが、矯正歯科医の窪田正宏先生です。窪田先生はこちらの話を親身に聞いてくださり、「毎月2,100円の調整費のほかは全額支援する」と言ってくださいました。本当にありがたかったです。そこに窪田先生が所属する矯正歯科医会から補助がおりて、治療費(調整費)に充てられることになりました。
不思議なことに、以前はあんなに泣いて痛がっていた娘が、窪田先生のところでは一度も泣かず、痛み止めとも無縁です。おかげさまで、ガタガタだった歯並びも今では少しよくなりました。
福島県から石川県にきて、半年以上が経ちました。最初は、不安で、不安でしかたありませんでしたが、いろんな方の温かいご支援を受けて今日までやってきました。多くの方の思いによって、私たち家族が支えられているのだと、今、改めて思っています。
Vol.04 第7回「ブレーススマイルコンテスト」受賞者トーク
「歯を見せて笑うことに抵抗がある」「歯磨きがしづらくてむし歯が多い」「前歯でものが噛み切れない」…。咬み合わせや歯並びに問題があることで生じる、さまざまな支障。なんとかしたいと思いつつも、急を要すものではないからと、治療のための行動をつい先延ばしにしている人も少なくないのではないでしょうか。実際、治療には何らかのきっかけが必要なようです。
では、実際に治療を始めた人たちは、どのような”きっかけ”があったのでしょうか。「第7回ブレーススマイルコンテスト(以下、ブレスマコンテスト)」の受賞者の皆さんに、「はじめの一歩」を踏み出した理由についてうかがいました。
■歯並びの悩み:
前歯同志が当たって咬みにくい
■治療期間:2年11カ月
当初は非抜歯でスタートしたものの、ご本人の希望で途中から抜歯治療に変更。治療では上顎のみ舌側に装置をつけ、仕上げはご本人の希望により約6カ月間、唇側からの治療を実施。2012年1月にブレースを撤去し、現在、保定開始2カ月目。
“いつの間にか”キレイになった友人に触発されて
増井美千代さん(熊本県在住/36歳)
私の場合、学生時代からの友人に影響されたのが、直接的なきっかけですね。あるとき、彼女の八重歯がなくなって、歯がきれいに並んでいるのに気づいたので「どうしたの?」と聞いてみたんです。そしたら「矯正しているんだよ」って。いつの間にか、歯の裏側に矯正装置(ブレース)をつけて治療していたんです。びっくりしました。そういう方法があるのを知らなかったので(笑)。
当時の私は前歯がしっかり噛み合わなくて、上下の歯が先端であたっているような状態。下の歯列もデコボコでした。そんな自分の口もとが気になってはいたのですが、治療して治そうとまでは思ってもいませんでした。それが友人のキレイに並んだ歯を見て、一気に気持ちが治療に向けて動き出して(笑)。こんなに口もとの印象が変わるのなら、しかも誰にも気づかれずに裏側から治療できるのなら、治したい! 治そう! って。それでさっそくその友人が通っている矯正歯科を紹介してもらって、歯の裏側からの矯正治療をスタートしたんです。治療の成果が目の前にあったので、気持ちが決まってからは迷いがありませんでしたね。
■歯並びの悩み:過蓋咬合
上下前歯の正中のズレ、顎関節雑音
■治療期間:2年6ヵ月
(現在、保定期間中で、4ヵ月に一度通院
咬み合わせが深く、上あごの咬合平面が左右に傾斜していることで下あごが偏位し、上下の前歯の正中がズレて、大臼歯関係が左右で異なっていた。そこで治療では、咬み合わせの高さを整え、正中のズレと顎関節症状の改善を図った。
今だ!と思えたときが、きっとベストな時期です
惣司(そうつか)友衣子さん(長崎県在住/29歳)
私は結婚するまで、京都の矯正歯科医院で歯科衛生士をしていました。私自身、咬み合わせが深くて前歯が出ていたので、キレイになっていく患者さんを見ながら、いつか自分も治療を受けよう、キレイな歯並びになろうとずっと思っていたんです。でも、独身の頃はいろんなタイミングが合わなくて、なかなか最初の一歩が踏み出せなくて。結局、自分自身の治療について具体的に考えられるようになったのは、結婚して歯科衛生士という仕事を離れてからでした。
結婚後は九州に住むようになったのですが、せっかく治療するなら自分が一番信頼できるクリニックで受けたいと思いました。それは私の場合、自分が勤めていた矯正歯科だったんです。先生も信頼できるし、歯科衛生士も患者さんのことを考えて仕事していることをよく知っていましたから、あそこなら安心してお任せできると。そんな気持ちを夫に話すと「物理的な距離よりも、精神的な距離が近いところで治療するのが僕もいいと思う」と賛成してくれたので、思い切って長崎から京都まで飛行機で通院することにしました。
もっと早く治療していればよかったとは思いますが、物事にはタイミングもあるので、実行できるときがベストな時期なんだと思っています。
■歯並びの悩み:叢生(乱ぐい歯)
■治療期間:1年7カ月(一次治療)・
約2年半予定(二次治療)
現在、下顎にまだ少しデコボコが残っており、それがキレイに並んだらブレースを外す予定。期間にすると、あと2~3カ月といった段階。
海外でも通用するキレイな歯並びを目指したい
小島千奈さん(岐阜県在住/15歳)
私は小さいときからあごが細くて、乳歯のときからデコボコしていたので、「時期がきたら矯正しようね」って両親から言われていました。私は小さかったので矯正がどんなものかよくわかりませんでしたけど、よく家族から矯正治療のことを言われていたせいか、悪い歯並びは治したほうがいいんだなって自然に思っていました。どうして両親がそんなに矯正治療に熱心だったかというと、お父さんがよく海外出張に行くんです。欧米は歯並びのいい人が多いので、お父さんも私の歯並びを気にしていたみたいです。
矯正歯科で治療を始めたのは、小学1年のときからです。近い将来、海外に住むかもしれないから、日本にいるうちに治療しておこうということで、お母さんがまわりの人の評判を聞いたり電話帳で調べたりして、車で通える範囲にある4軒くらいの矯正歯科に相談に行きました。私はそのときのことをよく覚えてないんですが、お母さんは先生から治療内容を説明してもらって、一番納得できたところに決めたようです。
■歯並びの悩み:叢生(乱ぐい歯)
■治療期間:
2009年9月に検査・診断
上下左右の第二小臼歯を計4本抜歯して、治療を開始。上顎大臼歯の固定源にTADs(インプラントアンカー)を使用。現在、正中線を補正するなど、治療の最終段階。
娘と一緒なら、支え合っていけるから
須藤大祐さん(宮城県在住/37歳)・彩乃さん(10歳)
高校卒業の頃から歯並びが悪くて歯磨きがちゃんとできないため、むし歯が多く、歯科医院との縁は切れませんでした。その頃から歯並びがコンプレックスになって、笑顔で写真に収まることに抵抗がありました。ですから、矯正治療をしてすっきりした口もとになりたいという思いは、ずっとありましたね。でも、仕事をして家庭をもって、という中で、なかなか治療する踏ん切りがつかなかったんです。
そんなとき、娘の彩乃が学校の歯科検診で咬み合わせをチェックされたことで、矯正治療というものが身近に迫ってきました。そこで「それなら二人で一緒に治療するか!」と、娘と一緒に矯正治療を始めることにしたわけです(笑)。矯正治療は歯が動くときに痛みがあると聞いていたので、二人同時に治療すると、お互いに支え合っていけるのでいいのではと。治療先を決めるにあたっては、通っている歯科医からの推薦はありましたが、自分が実際にそのクリニックを訪ね、先生の説明やスタッフの印象などを総合的にみて判断しました。やはり納得できるかどうかを大切にするのが重要だと思いますね。
Vol.04 第7回「ブレーススマイルコンテスト」受賞者トーク
弱い力をかけ続けて、ゆっくりと歯を動かしていく矯正歯科治療。物理的な矯正力が体の負担にならないよう、治療は数年かけて行われます。人生の中での数年間は、わずかな期間。それでも治療中にはさまざまな変化が起こるものです。
受賞者の皆さんも、ブレスマコンテストの受賞を始め、治療前には思ってもいなかった”うれしい”変化があったよう。いったいどんな変化でしょう?
★応募写真について
2番目の子が不思議そうにブレースをさわった瞬間を、夫が撮ってくれました。このときすでに、おなかに3番目の子どもが宿っていたんですよ。
最優秀賞:「1番のスマイルをあなたに!」
>>写真をクリックすると、大きな写真と受賞コメントが現れます。
矯正治療に対する意識が変わりました!
増井美千代さん
治療中の変化はたくさんありました。何と言っても大きいのは、治療前からつきあっていた彼との結婚、妊娠、出産ですね。治療期間の最後には3人目の子どもも授かりました。自分の生活も大きく変わりましたが、こういう変化が始まる前に治療できたのはよかったと思います。
それと、変化といえば自分自身の矯正に対する意識の変わりようも大きいですね。最初はまわりの人に治療していることを気づかれたくないから歯の裏側にブレースをつける”見えない矯正”を選んだのに、治療が進むうちに、気づいてもらえないのがつまらなくなってきて、「私、今矯正してるの」って自分から話すようになりました(笑)。
受賞した写真にはブレースが写っていますが、あれは歯並びを最後に微調整するために短期的に前からブレースをつけたときに撮ったもの。先生から「微調整する方法として、歯の表側にブレースをつけるのと、取り外しのできるポジショナーという装置をつけるのと2つあるけど、どっちがいい?」と聞かれて、迷わず「表側からのブレース」と答えました。歯並びがキレイに整っていく中で、ブレースはだんだん体の一部になっていって、つけているのは恥ずべきことじゃないと思えるようになったんです。そして、最後にはブレースがついた写真でコンテストに応募して、最優秀賞までいただくことに(笑)。そんな自分の意識の変化にびっくりしています。
★応募写真について
矯正歯科医院に置いてあった募集チラシを見て、自分のいい治療記録になればと思い、実家で撮った写真で応募しました。まさか賞がいただけるなんて思ってもいませんでしたが、治療中けっこうがんばったので、その努力が認められたようでうれしいです。
患者さんの気持ちを知ることができました!
惣司(そうつか)友衣子さん
私も治療中に妊娠・出産を経験しました。子どもは欲しいと思っていたので妊娠したのはうれしかったし、治療中だからといって特別大変なことはなかったのですが、歯が動いて痛みがあるときに鎮痛剤が飲めないのだけは少しつらかったですね(笑)。
治療中の変化という点では、矯正治療を患者の立場から経験できたのが自分にとって大きな気づきとなりました。もともと歯科衛生士をしていたので治療の流れや方法はわかっていたつもりですが、実際、患者になってみると新しい発見がいろいろあったんです。そのひとつが、ブラッシング。大人であれば説明を聞いてできると思いますが、小さいお子さんの場合は、その通りに実行するのは難しいだろうなと改めて思いましたね。
私は大人ですから、むし歯をつくらないよう、毎日2列の細い歯ブラシやワンタフトブラシなど、衛生士時代に扱っていたアイテムをフル活用して歯磨きしました。外出先にも、気になったらすぐ磨けるよう歯ブラシと歯間ブラシを持参したり、すぐ磨けない場合に備えてつまようじを持ち歩いたりして、元歯科衛生士として恥ずかしくないようお手入れに励みました。
★応募写真について
去年の夏、旅行先でお母さんに撮ってもらいました。
(お母さま)
2010年8月、旅行先の北海道で撮影。この笑顔はコンテスト用ではなく、滅多に食べることのできない大好物の夕張メロンを前に、つい出てしまった満面の笑みです。普段は、カメラを向けると作り笑いになりがちですが、カメラやブレースをまったく意識していない笑顔が、両親の一番のお気に入りです。
海外に住んで、歯並びの大切さを実感!
小島千奈さん
小学4年から6年までの3年間、お父さんの仕事の都合で、ロンドンで暮らしたことが大きな変化かもしれません。ちょうど経過観察の時期だったので、ロンドンでは矯正歯科に通わず、お母さんがメールで日本の先生に相談したり、一時帰国するたびにクリニックに行って歯並びをチェックしてもらっていました。ロンドンでは矯正している子も多かったし、やっぱり歯並びって大事なんだなって思いました。
本格的にブレースをつけた治療が始まったのは中学に入ってからで、あと数ヵ月で終わる予定です。早く終わるといいなあ。今はもうブレースにも慣れてカタイものでもガムでも何でも食べられますけど、歯が動く痛みがあるとき(毎月の通院後2~3日)はパンを食べるのもつらいので(笑)。そんなとき、友達が目の前で私の好きなものを食べていたりすると、いいな~って思っちゃいます。ただ、痛いって言っても眠れないくらいじゃないし、何日か経ったら痛みが収まるのがわかってるから平気。痛いときはお母さんにスープとか噛まずに済むお料理をつくってもらって、がんばって乗りきっています!
★応募写真について
毎朝、娘と一緒に家を出るんです。この写真は家を出る前、玄関先で撮ったもの。コンテストの締め切り直前だったので、撮ってすぐに応募しました。
大震災の混乱の中、絆の大切さを再認識!
須藤大祐さん
宮城県に住んでいるので、治療中印象に残っているのは、やはり東日本大震災ですね。ちょうど去年の2月上旬に、上の前歯を後ろに動かすために上あごにインプラントアンカーを入れたんです。その術後1ヵ月というタイミングで大震災が起こりました。
治療中、特に術後は口の中を清潔に保たなければいけないのに、当時は歯磨きもろくにできない状態。月に一度の通院予定日が迫っていたこともあり、矯正歯科の先生に無理を言って、震災直後の混沌とした状況の中、口の中の清掃といつものワイヤー調整をしていただきました。当時は、電気は復旧してもガスが通っていなかったので、いつもの温水ではなく、水での口腔内清掃となりました。その水の冷たさが、当時の思い出として強く残っていますね。幸い、娘のほうは通院予定日がずれていたのと治療内容が違うので、緊急で診ていただかなくても済みました。
そんなこんなで一時は大変でしたが、熱心な先生のおかげで僕も娘も無事治療を続けることができています。大変な時期と重なったからこそ、治療がもたらしてくれた人との絆や、まっすぐな歯を、親子ともども大切にしていきたいと思っています。
Vol.04 第7回「ブレーススマイルコンテスト」受賞者トーク
すでにブレースが外れ、今は整えた歯並びをその場で保つ保定期間中の増井さんと惣司さん、そして、もうすぐ治療が終わる須藤さんと小島さん。 それぞれの立場から、キレイな歯並びに託した未来への思い、治療を受けて変わったと思う点など、明るい将来に向けたメッセージをうかがいました。
「矯正治療っていいよ」って、みんなに知らせたい!
増井美千代さん
歯並びをよくするには、歯を削ったり抜いたりして、時間をかけずに簡単にできる方法もありますが、私は時間がかかっても自分の歯を根っこの部分からまっすぐに整えていく矯正治療を選んで本当によかったと思っています。治療を始める前は矯正がどういう治療か知りませんでしたし、自分が数年かけて歯を治すなんて思ってもみませんでした。でも、治療を始めて歯が整っていくにつれて、自分の歯がいとおしく思えて、大切にしたいと思うようになりました。治療してよかったと自信をもって言えるので、まわりで歯並びに悩んでいる人がいたら、矯正をすすめたいですね。私は33歳から治療を始めましたが、スタートするのに遅すぎるなんてことはありませんから。
自分の子どもの歯並びに問題があればどうするか? もちろん、治療を受けさせてあげたいと思います。
「矯正治療っていいよ」って、みんなに知らせたい!
惣司(そうつか)友衣子さん
歯科衛生士をしていたときは、たくさんの患者さんがキレイになっていくのを見ると、正直、うらやましいな、自分も同じようになりたいな、という思いがありました。ですから、念願の矯正治療で歯並びがキレイになったのは本当にうれしいことです。
以前は、歯並びだけではなく顎関節に痛みもあり、口が開きづらいという機能的な問題も抱えていました。そんな不調も、咬み合わせがよくなったおかげでほとんど感じなくなりましたね。そう考えると、治療は見た目だけではなく、健康のためにもよかったんだと思えます。主人も、「口だけみるとセレブだね」って褒めてくれるんです(笑)。そう言われると、私のうれしさも倍増。治療してよかった! と心から思えます。これからはリテーナー(保定装置)もきちんと使って、一生キレイな歯並びを保ちたいと思っています。
「まっすぐな歯並びで思いっきり笑いたい!
小島千奈さん
まだブレースはとれていませんが、以前のガタガタした歯並びがすっきりキレイに並んだので、ブレースをつけた状態でも思いっきり笑えるようになりました。そこは以前と全然違う点です。治療していると痛みがあったり、歯磨きが面倒だったりしますけど、今となっては治療してよかった。ブレースがとれたら何がしたいか、ですか? うーん、なんだろう。やっぱり思いっきり笑いたいです。ブレースのないキレイな歯で(笑)。
娘と一緒に笑顔の写真をたくさん撮りたい!
須藤大祐さん 治療前は笑顔の写真を撮られるのが苦手でしたけど、今は気にならなくなりました。逆に、写真となるとつい笑顔になってしまう(笑)。この違いはかなり大きいと思いますね。あと、以前は咬み合わせが悪かったこともあって、無意識のうちに歯をかみしめて、歯ぐきがうずくこともあったのですが、治療してそれもなくなりました。そういう部分のストレスが解消されたので、対人面でのコミュニケーションにもいい変化が出ているのではと思います。
娘の治療は発育に応じてこの先もまだ続きますが、ひとあし先に終わる自分としては、これからも娘の治療を見守っていくつもりです。そして、二人揃ってブレースがとれたら、そのときにはまた同じように二人で笑顔の写真をたくさん撮りたいですね。
咬み合わせがよくなって、
ラーメンだっておいしく噛んで食べられます!
受賞した写真はお昼ご飯のシーンです。私の歯並びは「開咬(かいこう)」といって歯を噛み合わせても上下の前歯が噛み合わない状態だったので、前歯で麺が噛み切れなかったんです。不便でしたけど、矯正治療をしようとは思っていませんでした。矯正ではなく、ひどいむし歯になった奥歯を抜いてブリッジかインプラントをしてもらおうと一般歯科に行ったところ、矯正治療をすすめられたのが最初です。紹介された矯正歯科に行くと、奥歯にむし歯が多いのは咬み合わせが悪いのが原因だと言われました。そして、開咬をきちんと治すには外科手術と組み合わせた矯正治療が必要だとすすめられたんです。
矯正歯科の先生は32本ある歯を人間にたとえて「32人の従業員のうち、半分しか働いていなかったら、その会社はどうなると思う?」っておっしゃいまして(笑)。私の口の中は、ちょうどそんな状態だったんです。それできちんと治す決心をしました。手術は去年の6月に無事終了し、今は術後の矯正中。あと半年くらいでブレースが外れる予定です。ブレースがとれたら? まっすぐな歯を思いっきりブラッシングしたいですね(笑)。
Vol.04 第7回「ブレーススマイルコンテスト」受賞者トーク
矯正歯科専門開業医の団体、日本臨床矯正歯科医会の主催で2005年から毎年行われているブレスマコンテスト。7回目を迎える今回は、「日本を支えるあなたの笑顔」をテーマに、2011年7月から作品を募集しました。その結果、寄せられたのは7歳から63歳までの幅広い年齢層からの183作品。応募期間終了後、日本臨床矯正歯科医会のメンバーと協賛企業の投票による1次審査と2次審査を行い、優秀賞3作品と東日本大震災被災地へのエールを込めた特別賞と優秀コメント賞、大阪大会賞が選ばれました。
そして、優秀賞3作品の中から最優秀章を決定する最終審査が行われたのが、表彰式前日。会場となった大阪国際交流センターの壁面には最終選考に残った作品がずらりと展示され、多くの人の注目を集めていました。
ベストコメント賞に輝いた福島県在住の岡村日向子さんはあいにく表彰式には欠席となりましたが、『笑顔で恩返し』というタイトルの受賞作品とコメントが会場のスクリーンに大きく映し出されると、たくさんの温かい拍手がわき起こりました。
最初は少し緊張ぎみだった受賞者の皆さんも、表彰式の進行とともに、だんだんリラックスした表情に。主治医の先生やスタッフの皆さん、そして表彰式に同行したご家族らが受賞者を囲んで記念撮影する頃には、和気あいあいとした雰囲気となりました。
皆さん、本当におめでとうございます!
ブレスマコンテストはこれからも毎年開催され、2012年の夏には第8回目の応募が始まります。今、治療中の方も、これから治療を始める方も、このコンテストへの応募を矯正歯科治療中の思い出のひとつにしてみてはいかがでしょう。
Vol.05 キレイな咬み合わせで、めざせ!健康長寿
世界に名だたる長寿国の日本。2010年の国民の平均寿命は、男性79.55歳、女性86.3歳となり、厚労省では、このままいけば2022年には男性81.15歳、女性87.87歳まで平均寿命が延びると推計しています。寿命が延びるのはよいことですが、その一方で気になるのが「健康寿命」です。
健康寿命とは「介護を受けたり病気で寝たきりになったりせず、自立して健康に生活できる」年齢のこと。いうなれば、平均寿命から平均療養期間を引いた数字です。
日本人の場合、2010年の時点で健康寿命は男性70.42歳、女性73.62歳。つまり、男性は9年あまり、女性は約13年間も日常生活に差し障りのある”不健康な”療養期間があるのです。
ちなみに、この健康寿命、2001年とくらべると延びてはいるものの、平均寿命に比べると延び率が小さく、9年前より療養期間が長くなっているのも気になる点です。
資料:健康寿命は厚生労働科学研究費補助金「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究」
平均寿命は厚生労働省「簡易生命表」
(注)日常生活に制限のない期間が「健康寿命」、0歳の平均余命が「平均寿命」
お話をうかがった
広島大学大学院医歯薬保健学研究院
丹根一夫先生
健康寿命を延ばすには、どうすればいいのでしょうか。
「それにはまず食事、睡眠、運動を適切に取り入れるなど日々の生活習慣を見直すと同時に、しっかりと咀嚼(そしゃく)できる安定した咬み合わせを保つことが大切です」と話すのは、広島大学大学院医歯薬保健学研究院 丹根一夫先生。
咀嚼とは、食べ物を細かく砕き、唾液と混ぜて飲み込みやすい状態にすることです。
「食物をしっかり咀嚼することは、胃や腸の消化吸収を助けるだけでなく、中枢神経系に働きかけて食べ過ぎを防いだり、唾液の分泌をよくしてむし歯や歯周病を防いだり、言葉の発音を明瞭にしたり、全身のさまざまな機能を活性するのに重要な役割を果たしているのです」
そのため、反対によく噛まずに食べると満腹感が得にくくなり、つい食べ過ぎてしまい、肥満につながります。また、咀嚼によって歯やあごが鍛えられないことから歯の組織が弱まり、さらにやわらかいものばかり食べるようになる…といった悪循環に陥ることに。
学校食事研究会が噛むことの効用をわかりやすい標語にしています。それが「ひみこの歯がいーぜ」。現代人にくらべて噛む回数が何倍も多かったと考えられている弥生時代の人々。邪馬台国の女王、卑弥呼もきっとしっかりと噛んで食べていたでしょう。
:肥満を防ぐ
:味覚の発達を促す
:言葉の発音がハッキリする
:歯をむし歯や歯周病から守る
:肥満を防ぐ
:がんを防ぐ
:胃腸の働きを促す
:全身の体力向上
「現代の食事はやわらかい加工食が多く、あまり噛まなくても飲み込めます。しかし、それは歯にも身体にもよくないこと。また、口の中にちゃんと噛み合わない歯があると、その歯のまわりにある骨や組織が萎縮して、その結果、歯と歯を支えるあごの骨の結合力が弱まって抜けやすくなってしまいます。つまり、歯は使わないと弱くなるのです。これは入院して寝たきりの生活を送っていると、筋肉が落ちて痩せてしまうのと同じ原理。歯が『噛む』という本来の機能を発揮するためには、きちんと噛み合う状態であることが大切です」
食べものを噛み始めると、それに伴う感覚情報が歯を骨とつなげている歯根膜(しこんまく)などで捉えられ、三叉(さんさ)神経に伝達されます。その際、咬み合わせが不安定だったり、歯をなくしてよく噛めない状態だと、脳への信号の伝達が十分に行われないため、ストレスをためやすくなったりもするのだそうです。
そして、それだけではなく、最近では安定した咬み合わせでしっかり噛むことが認知症のリスクを下げることもわかってきているのだとか。
次のページでは、脳の健康と歯の関係についてご紹介します。
Vol.05 キレイな咬み合わせで、めざせ!健康長寿
最近では、安定した咬み合わせでしっかり噛むことが認知症のリスクを下げることもわかってきています。その話に入る前に、まず、噛むことによって脳にどれくらいの刺激を与えているのか、丹根先生にうかがいました。
「口の中や舌、歯の根もとにある歯根膜には、味覚や触覚、冷温、痛みなどを敏感に感じ取る感覚センサーがたくさんあり、咀嚼することで大量の感覚情報が脳に流れ込みます。その情報量は、手足や身体のほかの部位からくる情報と比べても格段に多いといわれています」
そのことを裏付けるのが、カナダのマギル大学のペンフィールド教授が作成した「ペンフィールド・マップ」。脳の表面に描かれた奇妙な顔と手足をもつ絵は、ホムンクルス(小さな巨人の意味)と呼ばれ、脳が身体を支配する領域の大きさに応じて、身体の部位を誇張して描かれています。それをみると、身体のほかの部位に比べて口や唇、舌の占める面積は非常に大きいことがわかります。つまり、それだけ口もとは精妙な動きができ、ものを噛むことによってきめ細かな情報を脳に伝えることができるのです。
ペンフィールド・マップ
そのため、歯を失うなどしてよく噛めない状態になると、認知症の一種であるアルツハイマー病のリスクが高まるといわれています。そこで丹根先生は、咬み合わせの良し悪しと認知症の関わりを調べるため、さまざまな実験を行いました。
■実験1:歯がないとアルツハイマー病になりやすい?
「先ほどお話ししたように、ものを噛むと、その刺激は歯根膜から三叉(さんさ)神経を通って中枢神経系まで伝達されます。その途中で、計算や思考、記憶のメカニズムをになう海馬(かいば)に情報が送られるわけです。一方、アルツハイマー病というのは脳が萎縮していく病気で、アミロイドβ(ベータ)というタンパクが脳の海馬周辺に沈着することで発症するといわれています。そこで、まずは普通に歯があるネズミと先天的に歯が生えてこないネズミを使った実験で、大脳皮質や海馬、視床下部などにおけるアミロイドβの沈着の様子を確認してみることにしました」
その結果、正常なネズミでは0個だったアミロイドβが、先天的に歯の生えないネズミでは、特に大脳皮質において平均157個のアミロイドβ沈着が認められました。
歯のある正常なネズミの大脳皮質(左)には認知症の原因となるアミロイドβが0個なのに対し、
歯のないネズミの大脳皮質(右)には平均158個のアミロイドβの沈着があった。
■実験2:噛まずに栄養をとっても海馬の細胞は減る?
次に、粉末のエサを与えたネズミと固形のエサを与えたネズミで、記憶・学習能力をつかさどる海馬周辺の細胞の数を比較したところ、「粉末の咬まずに食べられるエサを与えていたネズミは固形のエサを与えていたネズミより、海馬の錐体(すいたい)細胞の数が少なくなることが明らかになりました」
固形エサを食べたネズミ(左)に対し、粉末エサのみを食べたネズミ(右)は、
海馬周辺の細胞数が少なかった。
「ここから推測できるのは、毎日自分の歯でものをよく噛んでいる人とそうでない人では、海馬の細胞数に差がある、つまり記憶・学習能力に差がつくのではないかということです」
丹根先生は、この2つの実験で歯と脳の関わりを機能と構造の面から確認したうえで、「モーリスの水迷路」といわれる実験で、さらに噛むことと記憶・空間認知能力の関係を調べました。
■実験3:噛む回数が少ないと空間認知能力が落ちる?
空間認知能力とは、周囲にあるものから自分の位置を知り、記憶すること。それも海馬の重要な働きです。
「先の実験と同じように、固形と粉末という硬さの異なるエサで育てた正常なネズミを直径60センチのプールに落とし、プールの縁までたどり着くまでの時間を8日間にわたって計測してみました。すると、どちらのネズミも生後半年齢ではハッキリとした差がなかったものの、生後約1年経ったネズミでは明らかな差が認められました」
粉末のエサを食べていたネズミのほうが、固形のエサを食べていたネズミよりゴールへの到達時間が長かったのです。
「モーリスの水迷路」実験で使う装置。 |
固形エサを食べていたネズミのほうが、 プールの縁まで到達する時間が早かった。 |
「これらの実験から見えてくるのは、しっかり噛めないと記憶や空間認知能力の司令塔である海馬の神経活動が不活発になるという可能性です。もちろん、認知症を引き起こす原因はさまざまで、噛むことで確実に予防できるものではありませんが、安定した咬み合わせでよく噛める状態を保つことは、認知症のリスクを下げる一因になるのは事実だと思います」
次のページでは、歯と診療費の関係についてご紹介します。
Vol.05 キレイな咬み合わせで、めざせ!健康長寿
少し前の情報になりますが、2005年の日経新聞に、朝食を食べた人と食べなかった人とで、記憶力にどのような違いが出るかを調べた研究結果が載っていました。それによると、朝食を食べたグループが明らかに優れた成績を示したそうです。また、別の研究では一日のブドウ糖の必要摂取量の約25%を朝食でとると、計算能力や想像力が高まったとされています。
ここで注目したいのは、やはり噛むことの効用。ご飯やパンに含まれる炭水化物は、噛むと唾液と一緒になって、ブドウ糖になります。大脳を働かせるのは、ブドウ糖の役割。
つまり、朝食をしっかり噛んで食べることで、脳と身体の健康に役立つのです。
「よく噛むことが健康維持につながるなら、よく噛める状態の歯を保つことは、医療費を減らすことにもつながるということです」と丹根先生は話します。
実際、兵庫県歯科医師会の研究から、残った歯の数が約8本の高齢者の診療費は、歯の数が約22本ある高齢者の診療費より月に1万円以上多いという結果が出ています。
「月々1万円以上も違うというのは年間にすると大変な差。しかも、歯の数と診療費は反比例の関係にあり、歯が少なくなるほど医療費が高くなるという結果になりました。さらに、歯が残っている高齢者は、かかる病気も、外耳炎や風邪、皮膚炎といった通院で済む程度なものなのに対し、歯の数が少ない、もしくはまったくなくて咬み合わせが保てない高齢者では、がんや糖尿病、肝硬変、認知症など、重篤な病気が目立っている点にも注目すべきでしょう」
ここまで読んできて、「では、すでに歯をうしなってしまった場合はもう手遅れなのか?」と思っている方もいるかもしれません。その点について、丹根先生はこう話します。
「歯がすでにない場合は、入れ歯などを利用して、ものが噛める状態にしておくことが大切です。抜けたままにしておくのは一番いけません」
しかし、入れ歯にすると、噛む力が天然の歯の約3分の1に落ちるというデメリットも。
「やはり一番よいのは、歯を失う前によく噛める状態に整えておくことですね。デコボコの歯並びなどでうまく咬み合わない歯は、歯磨きもしづらく、歯周病やむし歯になりやすいため、歯の寿命もおのずと短くなってしまいますから」
そこで重要になるのが、安定した咬み合わせをつくる矯正歯科治療です。
次のページでは、大人になってから始める矯正歯科治療についてご紹介します。
Vol.05 キレイな咬み合わせで、めざせ!健康長寿
矯正歯科治療とは、歯やあご位置を、上下・左右・前後と3次元的に見て、問題のある咬み合わせを直していく治療のこと。歯の根もとにある歯槽骨の新陳代謝のメカニズムを利用して、弱い力を継続的にかけることによって、理想的に咬み合う位置に歯を動かしていくのです。
そもそも咬み合わせが悪くなる原因には、遺伝的なものと後天的なものとがあります。このうち根本的に咬み合わせに影響をおよぼしがちなのは、やはり両親から受け継いだ遺伝的なもの。例えば、親が乱ぐい歯だとその子どもも同じような乱ぐい歯になりやすいのは、歯の生えてくる時期やあごの骨の発育のしかたなどに遺伝的な条件が影響するためだといわれています。
よくない咬み合わせ(不正咬合)は、こうした遺伝的要素に、子どもの頃の指しゃぶりや乳歯のむし歯、口呼吸、噛み癖、舌の癖など後天的な要素が加わり、成長する中でつくりあげられていきます。
不正咬合をそのままにしておくと、ここで紹介したように健康面での問題が起こりやすいだけでなく、笑顔に自信がもてなかったり、歯に対するコンプレックスから人間関係でも消極的になったりしがちです。もちろん、咬み合わせに多少問題があっても、人間には適応力があるため、ただちに問題が起こるわけではないでしょう。しかし、そういう人は歯周病になったり、むし歯ができたりといった何らかの変化が加わると、口腔にかかる負担がより大きくなり、トラブルにつながる危険性を秘めているということです。
公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会が2012年に全国のOL300名を対象に行った意識調査によると、矯正歯科治療について「くわしく知っている」「なんとなく知っている」と答えた人の割合は約82%。そして、矯正歯科治療をしたいと思ったことが「ある」と答えた人は、半数近い47%となっています。
日本臨床矯正歯科医会調べ
少し前まで子どもが受けるもの、という意識が強かった矯正歯科治療ですが、最近では年齢に関係なく治療に関心を持ち、受けたいと考える人が増えてきているようです。その背景には歯に対する意識が高まったことや、歯と健康の関わりを大切に考える人が増えてきたことが挙げられるでしょう。
安定したキレイな咬み合わせをつくる矯正歯科治療は、言うなれば、食事や日常生活に気を配って、いつまでも健康で若々しくいるための、いわばフィットネスと同じ。一生、自分の歯で食べ、話し、笑うための前向きな投資にほかなりません。
今、咬み合わせに自信がないと感じている人は、将来問題を起こさないために、早めに専門家の意見を聞いて、自分の咬み合わせの状態を把握することから始めてみてはいかがでしょう。自分の歯に関心を持つこと、それは健康寿命を延ばし、幸せな人生を送るための大切なファーストステップでもあるのです。
Vol.06 第8回「ブレーススマイルコンテスト」表彰式と、舞台裏
矯正歯科の待合室などに貼られた、
この作品募集のポスターに、
見覚えのある人もいるのでは?
もうご存じの方も多いかもしれませんが、「ブレスマ」こと「ブレーススマイルコンテスト」は矯正装置(ブレース)をつけた素敵な笑顔の写真を募集するユニークなフォトコンテストです。
「ブレースをつけた笑顔!?」と驚くなかれ。実は、治療中の多くの患者さんは「日に日に歯並びが整っていくのがうれしくて、ついつい笑顔になる」と語っているのです。「最初は恥ずかしいと思ったブレースが、いつしか自分の身体の一部のように思えてきて、なんだか愛しい…」。患者さんのそんな思いと自然にマッチするこのフォトコンテストは、2005年にスタートして以来、クチコミなどで徐々に広まり、矯正歯科治療中の患者さんに広く知られるようになってきました。
コンテストを主催するのは、社団法人日本臨床矯正歯科医会(以下、矯正歯科医会)。約40年の歴史をもつ矯正歯科専門開業医の団体です。
矯正歯科医会のメンバーと協賛企業は応募期間の終了後、集まったすべての作品とコメントに目を通した上で、1次審査と2次審査を実施。最優秀賞1作品と優秀賞2作品、そして特別賞として東京大会賞1作品を選出しました。
受賞者の皆さんをお招きして表彰式が行われたのは2月7日。
表彰式の会場は、東京・神保町の学術総合センターです。本番の開始時間より約2時間早く集まった受賞者の皆さんは壇上でのリハーサルを済ませた後、少し緊張した面持ちで、会場の前方席で表彰式が始まるのを待ちます。そして12時40分、いよいよ式が始まりました!
第8回目となる今回は、受賞者を表彰する前に、これまでの受賞作品が紹介されました。
生まれたばかりの子どもを胸に抱くお母さんや元気にボートを漕ぐ少女、そして満面の笑みでピースサインをする父娘……。ブレースをつけた笑顔の作品を前にすると、今や世代・性別を問わず、矯正歯科治療が世の中に根付いてきていることを実感します。
なかでも印象的だったのは、第1回目の最優秀賞受賞者である松本奈都子さんが、今回の表彰式のために特別に寄せてくれたコメントでした。
「第8回ブレーススマイルコンテスト」受賞者の皆さま、
おめでとうございます。
私も、第1回で受賞させていただきました。
治療時を振り返ると、痛みに耐えることや歯磨きの手間など、大変なことがありましたが、
今ではあの痛みもすっかり忘れてしまっているくらいです。
治療のおかげで、口もとへの視線も気にならなくなり、
自然な笑顔も出るようになりました。
治療後すぐに、結婚・出産をして、現在は3人目の出産に向けて、とても幸せな毎日を送っています。
現在治療中の方、長い期間大変ですが、
将来の自分の素敵な歯並びと楽しい生活を夢見て、
前向きに頑張ってください。
受賞当時、27歳だった松本さん。雄大な北海道のひまわり畑をバックに、花に負けないくらいの笑顔でみごと最優秀賞を勝ち取った彼女が、治療を終え、笑顔あふれる幸せな家庭を築いていることに改めて感動を覚えました。
次のページでは、いよいよ受賞者の皆さんの表彰の様子をご紹介します!
Vol.06 第8回「ブレーススマイルコンテスト」表彰式と、舞台裏
表彰式が始まってしばらく経った頃、「それでは、第8回『ブレーススマイルコンテスト』受賞者の表彰に移らせていただきます」と、司会の小林真実子さんが受賞者の名前と応募時に寄せられたコメントを読み上げていきます。
まずは東京大会賞の発表から。248作品の中から選ばれたのは——–。
「作品タイトル『矯正に勝つ!』」。板橋区在住の黒澤柊子(とうこ)さんです」
会場からは大きな拍手がわき起こり、ステージのスクリーンには空手の練習着を着て凛々しい笑顔を見せる、黒澤さんの受賞作品が大きく写し出されました。
小学校3年生から矯正をはじめました。
大変なことはたくさんありましたが、
その中でも空手の組み手で矯正器具があたり、こわい思いもしました。
でも最後までやりとげてきれいな歯を手に入れたいです。
そして思い切り組み手の試合ができるようになって優勝したいです。
「空手も矯正も、自分からやりたいって言いました。キレイな歯並びになれる日を目指して、これからもがんばっていきます」とスポーツ少女らしく、元気いっぱいに話してくれた黒澤さん(11歳)。賞状と記念品、そして主治医の先生から花束を受け取ったときも「ありがとうございました」と大きな声で答える姿が印象的でした。
これからも空手と治療を、楽しみながら両立させてくださいね。
次は、優秀賞2作品に選ばれたお二人の表彰です。
一人目の優秀賞受賞者は——–。
「作品タイトル「まぶぴー」。北海道在住の熊谷さくらさんです」
兄の運動会で撮影した写真です。
まだ矯正をして1年くらいですが、
治療前よりかわいくなった様な…親ばかです。
ごめんなさい。
続いて二人目の優秀賞受賞者は……。
「作品タイトル「母娘(おやこ)でお揃い!ブレーススマイル」。大阪府在住の金輪智彰(ちあき)さんです」
高校生の娘が先に治療を始め、どんどんそろっていくのをみて、
私も『えいっ!』と始めました。
当時49歳という年齢で少なからず不安もありましたが、
長年のコンプレックスだった歯が揃っていくのをみて、
矯正治療を始めてよかったと思っています。
娘とは、痛みの相談や歯の手入れの相談など励まし合っています。
心強い矯正仲間です。
壇上で「治療が終わったら、今は食べにくいペッツとハイチュウを食べたいです」と答えてくれた熊谷さん(11歳)。将来の夢は、あのAKB48に入ることだとか。輝く笑顔で、ぜひ夢をつかんでくださいね。
そして、金輪さん(50歳)は、お嬢様の美紗子さん(18歳)と仲よく壇上へ。そして、ユーモアたっぷりに「娘の整っていく歯並びに影響されて、私が49歳で治療を始めたら、まわりの同世代の女性たちがたくさん後に続きました。私、関西方面で矯正の広報活動をしています!」とコメント。会場からは笑いと拍手がわき、場の空気が一気に和やかに。また、お嬢様の美紗子さんも、「母と一緒に治療をしているので、食後は歯のどこに何が詰まっているかを言い合ったりできて楽しいです」と笑顔で話してくださいました。
熊谷さん、金輪さん、受賞おめでとうございます!
そして、最後はいよいよ最優秀賞受賞者の表彰です。
第8回「ブレーススマイルコンテスト」最優秀賞に選ばれたのは……。
「作品タイトル『北アルプスをめざして!!』、大阪府在住の山本広美さんです」
司会者の声と同時に、ステージのスクリーンに、登山姿の山本さんがさわやかな笑顔でピースサインをする受賞作品が大きく写し出されます。
60才になってから山登りを始め、
身体を動かす事により、何事にも前向きに!
昨年末、矯正歯科にトライ!
まわりからは今さらと思われながら、
矯正の装置や歯の微妙な変化を楽しんでいます。
そして、北アルプスをめざすトレーニングを
している今日この頃です。
受賞作品の口もとにはカラーゴム(※)をつけたブレースが。よく見ると、ステージ上で満面の笑みを浮かべる山本さん(61歳)の口もとにも、カラーゴムがついています。 「60歳を過ぎてから矯正を始めたいという私の思いを受け止めてくださった主治医の先生に感謝いたします」と壇上でコメントした山本さん。決して60代とは思えないその若々しさに、会場からまたもや大きな拍手がわき起こりました。
山本さん、本当におめでとうございました!
※カラーゴムは正式には「カラーモジュール」といい、ブラケットにワイヤーを固定するために使われる小さな輪ゴムを指します。カラーモジュールには目立たない色のほか、ブルーやピンクなど、カラフルな色もあります。
「ブレスマ」こと「ブレーススマイルコンテスト」は、毎年開催されます。
2013年も、初夏から作品の募集が始まる予定。現在、矯正歯科治療中の方あるいは家族や友人などが治療中という方は、素敵な思い出のひとつとして、とびっきりの笑顔で「ブレスマ」に応募してみては?
来年、このトレンドウォッチに登場するのは、今この記事を読んでいる”あなた”かもしれません!
<ブレーススマイルコンテストについての最新情報は、矯正歯科医会のホームページをご覧ください。>
次のページでは、最優秀賞に輝いた山本広美さんの治療のきかっけや現在の思いをご紹介!
Vol.06 第8回「ブレーススマイルコンテスト」表彰式と、舞台裏
「いくつになっても、変化を楽しみながら、
新しいことにトライしていきたいですね」
今回、最優秀賞に選ばれた山本さんは、歴代の受賞者の中で最年長の61歳。しかし実際には、実年齢を疑いたくなるほど若々しくみえる素敵な女性です。そんな山本さんに、受賞作品のことを始め、治療に踏み切ったきっかけや治療後の生活、そして今のお気持ちなどについて率直にうかがいました。
――今回は最優秀賞の受賞、おめでとうございます。選ばれたときのお気持ちは?
まさか選ばれると思っていなかったのでビックリしました(笑)。でも、うれしかったです。
――この写真は、どういうときに撮られたものですか?
近くの低山で、山登りのトレーニングをしているときのものです。山登りを始めたのは60歳になってからですが、60という数字に特別な意味はなくて、たまたま夫が山登りの仲間から誘われて、私も一緒に行くことになったのがきっかけです。そのメンバーで昨夏、はじめて北アルプスに登ることになったんですが、北アルプスといえば標高2500メートル以上あり、登り慣れた人ならともかく、初心者の私が簡単に登れるようなものじゃありません。ですから、本番に備えて毎月、近くの山を登って足腰を鍛えていたんです。
――ブレースをつけての登山、特に問題なかったですか?
この写真を撮った後に登った北アルプスでは、往路の夜行で1泊、山小屋に3連泊という行程だったので、歯磨きが大変でした(笑)。山小屋では水はたくさん使えないし、山歩き中は「行動食」といって小休憩のときに食事をとるので、食べ物がブレースにはさまったときのケアが難しくて。でも、なんとか乗り切りました。
高い山はそれだけ大変なんですけど、下山するとなんだか山が懐かしく思えてきて、また行きたくなるんですね。
――大変だけど続けたいって、どこか矯正歯科治療と似ている気もしますね。
そうかもしれませんね。私はもともと新しいことを始めるのが好きなほうなんです。もし何かを始めてよくないことが起こったとしたても、それをよい方向に変えていけばいいし、その努力も楽しいものです。「言うは易し」で、なかなか実行はできませんけれど。
矯正の治療でも、歯をキレイに並べるために、治療の途中であえて歯と歯の隙間を空けたりすることもありますよね。そんなときは、歯の動きを見て「これで大丈夫かな?」と思うこともあります。でも、そんな気持ちも含めて、治療しているのは楽しいことです。
――山本さんが今、治療を始めたいきさつを教えてください。
もともと歯並びに問題があって、矯正治療を受けたいとずっと思っていました。実際に歯科に相談したこともあるんですが、私が若い頃はまだ矯正をする歯科の数が少なくて家からも通いにくかったし、結局、断念しました。その後、もう年齢的に治療は無理だろうなと思っていたんです(笑)。年齢を重ねるに従って咬み合わせが深くなり、痛みが出てきたので治療したい気持ちはありましたけどね。
そうこうしているとき、知り合いの女性が矯正治療を始めたんです。その方は私より15歳くらいお若いんですけど、ブレースをつけているのをみて、「やろうと思えばできるんだ」と改めて思いました。また、その数年後、行きつけの歯科医院で矯正歯科治療の相談を受け付けていることを聞き、相談してみることにしました。いきなり矯正歯科医院を訪ねるのは二の足を踏んでも、相談会なら気軽に行けますからね。その相談会で気持ちが固まったのが直接のきっかけです。
――そこからすぐに治療を、となったんですか?
いえ、相談した先生からは「今からの治療は、いろんなリスクもあって大変ですよ」と言われました(笑)。でも、私は逆にこの歳でもトライできることをみんなに知ってもらったほうがいいと思って、治療することに決めたんです。
――では、迷いはなかったですか?
ありましたね(笑)。矯正歯科を訪ねたとき、先生から「治療には骨を削る手術もありますよ」などと言われて驚きました。しかも、治療期間は「ブレースをつけるのが3年、その後の保定期間(動かした位置で歯を保つための装置をつける期間)が3年、計6年くらいかかります」と言われたときは、さらに「えっ、そんなに?」って。
それでも治療したい気持ちは変わりませんでした。このまま何もしないで入れ歯になるよりは、キレイな歯並びに整えることで将来に備えたいと思ったからです。結局、私の場合は手術をするには年齢的なリスクが大きいだろうということで、多少ブレースをつけている期間が延びても手術はせずに治療する道を選び、今に至ります。
――カラーゴムが素敵ですね。
ありがとうございます。せっかく治療しているんですから、ブレースを隠すことはないと思うんです。なので、私は毎月の通院のたびにカラーゴムの色を変えたりして楽しんでいます。受賞作品ではレインボーカラー、今は口の中から季節を先取りしようと桜色です(笑)。
ほかにも、夏ならさわやかな青、秋なら紅葉の黄や茶色、クリスマスの頃なら赤と緑と、季節を色で楽しんでいるんですよ。でも、クリスマスの赤と緑は不評でしたね、どうやら赤がよくなかったみたいです(笑)。
――周囲の方は山本さんの治療について、どういう反応ですか?
私、デイサービスでボランティアをしているんですが、そこで会うお年寄りたちは、カラーゴムの色が変わったら「変わったね」と言ってくださいます。なかには「そこまでしなくても」と言う方もいらっしゃいますが、頑張っている私を応援してくれる方が多いですね。ボランティア先でもヘッドギア(※)をつけることがあるんですよ。もちろん、周囲に断った上でね。つけると皆さん、ちょっと驚かれますけど、自分の意志で始めた治療ですから周囲の目は気になりません。
治療が終わったら、今は食べづらい固いおせんべいなどを食べて、しっかりとあごを鍛えて、安定した咬み合わせを長持ちさせたいですね。
山本さん、素敵なお話、ありがとうございました!
※ヘッドギアとは、上の奥歯を後方に移動させるために使われる、取り外しのできる装置。
次のページでは、優秀賞と東京大会賞に選ばれた3組のインタビューをご紹介!
「矯正に勝つ!」
黒澤柊子(とうこ)さん(東京都)